半導体工場を拡張する東芝の思惑 伸び盛りの市場を狙い撃ち
「四日市工場からグローバル市場へ向けて製品を供給し続け、世界のメモリ市場を席巻する」。9月9日、三重県四日市市の次世代半導体メモリ生産拠点の新棟竣工式の会見で、東芝の田中久雄社長はこう意気込みを語った。
同工場は1993年の操業開始以来、一貫してメモリを製造。現在ではNAND型フラッシュメモリのみを製造しており、3つのクリーンルームと研究開発等を行う施設1棟を擁する。新棟は、2011年7月に竣工した第1期分と今回竣工した第2期分を合わせると約3万8000平方メートル(建屋面積)になり、3つのクリーンルームの中で最大となる。今年4月から世界初となる回路線幅15ナノメートル(ナノは10億分の1)の微細化プロセスを用いたNAND型フラッシュメモリの本格量産を開始。今後の市場の状況に合わせて、生産能力を増強していく方針だ。
伸び盛りのNAND型フラッシュメモリ市場
NAND型フラッシュメモリは、電源を落としても記憶が保存され、また電源をつけると記憶が再生される超小型のメモリ。SDカードやスマートフォンやタブレット、PCに使われている。米調査会社のIHSによると、NAND型フラッシュメモリの市場規模は258億ドル(約2兆5800億円)に上る。今後は、データセンターや大型サーバー向けの需要が増加するため、「20年には10倍の拡大を見込める」(田中社長)という成長分野である。
13年のNAND型フラッシュメモリのシェアは、韓国サムスン電子がシェア30.7%、米サンディスクが20.4%、東芝が19.5%となっている(IHS調べ)。ただ、東芝とサンディスクはNAND型フラッシュメモリの製造で提携をしており、製造装置などの投資は折半している。東芝・サンディスク連合でみると、サムスン電子を上回る。
東芝にとって半導体事業、特にNAND型フラッシュメモリは、屋台骨ともいえる。14年3月期の電子デバイス部門の営業利益は2385億円で、グループ全体の営業利益82%を稼いでいる。東芝は成長に向けて「エネルギー」、「ヘルスケア」と「ストレージ」の3つの柱を最重要分野と掲げているが、中でも「ストレージ分野における最重要事業が、四日市工場で製造しているNAND型フラッシュメモリだ」(田中社長)としている。
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