
たまき・のぶすけ●東京大学経済学部卒業、日本銀行、総合研究開発機構などを経て2011年から現職。英ロンドン大学経済学修士。
公的年金の意義は、次のような例だと理解しやすい。
一人息子と一人娘の夫婦が双方の両親を扶養することを考えてみよう。両親は2組とも70歳で引退して、年間出費300万円の生活に入る。両親に貯蓄がなく、100歳まで30年間生きるとすると、老後生活に1億8000万円(300万円×30年×2組)が必要になる。公的年金がなければとても負担できない。
一方、5人兄弟と5人姉妹との5組の夫婦がいるとする。2組の両親を70歳から年間300万円で扶養し、両親が4人とも75歳で亡くなるとすると、夫婦1組当たりの扶養負担は600万円(300万円×5年間×2組÷5)で済む。
このことからわかるのは、きょうだいの数や親の寿命という要因で、これだけ大きな差が出てしまうということ。しかし、公的年金があると、収入の一定割合を負担すれば、親の扶養リスクを軽減できる。
かつて高齢者は家族の中で養われ、介護されていた。子どもの数は多く、地域社会の結び付きも強かった。高齢者は短命で、介護のリスクをみんなで分担していた。ところが、都市化と核家族化が進み、家族や地域ではお年寄りを支えられなくなった。公的年金がなければ、核家族化は進行しえなかった。今の年金制度は現代の社会に合った、非常にうまくいっている仕組みだ。
年金ですべては無理、長く働くことが大切
もちろん、現行の年金制度にも残された課題はある。
男性の平均寿命は女性より6年短いので、5歳年上の男性と結婚した女性は、平均11年間一人で暮らす。もし夫が自営業者だった場合、この女性の老後は基礎年金だけになる。月額約6万円の基礎年金額から介護保険料などを引くと、基礎といえないほどしか残らない。
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