神山健治氏が初監督した近未来SFのテレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)』は、国内外で評価が高く、アニメ史に残る金字塔的作品だ。その名作から15年、神山氏が新たに手掛けた劇場アニメ『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』は、SF色やファンタジー色を抑えたロードムービー。アニメ制作の第一線に立ってきた神山氏が、新作に込めた思いと、そして業界へのいらだちを赤裸々に語る。

かみやま・けんじ / 1966年生まれ。背景美術からキャリアをスタートさせ、2002年に監督デビュー。原作・脚本も手掛ける。
──『ひるね姫』の主人公は、倉敷に住む普通の女子高生。従来の神山作品とは一線を画す設定です。
東日本大震災後、アニメの見られ方が百八十度変わった。震災以前は世界が終わる終末思想的で非現実な作品がよかった。実際にはそんな日は来ないとみんな思っていたから。だが震災以降は、変わらない日常こそがファンタジーになってしまった。今はこれまでなら企画が通らなかった青春ものなどが好まれる一方、SFや壮大なファンタジーはあまり求められなくなっている。
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