第4次ブームに沸くアニメ業界。市場はついに2兆円に迫り、海外からもマネーが流入。一方で制作現場は低賃金労働に苦しむなど、構造問題が横たわる。新次元へと突入するアニメ経済圏の最前線を追う。
[記事のポイント]
(1) 『君の名は。』などヒット作が多かった16年のアニメ市場は約2兆円。国内邦画興行収入トップ10のうち実に7本がアニメだった
(2) 海外では有料動画配信サービスの競争激化で、差別化のために日本のアニメが注目されており、取引額が総じて高騰している
(3) だが、制作現場に目を向けると光景は一変。活況にもかかわらず制作会社の収益は悪化し、アニメーターの雇用は不安定で賃金も低い
結局、誰が儲かっているのか?
宴の裏側
「どっちか見た?」昨年以降、職場や家庭でこんな会話をした人も多いはずだ。アニメ映画『君の名は。』(昨年8月公開)と『この世界の片隅に』(同11月公開)は、幅広い世代が映画館に足を運ぶ社会的現象を引き起こした。
前者は国内アニメ映画では宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(2001年公開)に次ぐ興行収入を記録。後者はSNSなどで評価が広まり、単館系作品としては異例の上映館数につながっている。
両作品のヒットは、アニメ市場において氷山の一角にすぎない。昨年の国内邦画興行収入ランキングではトップ10の11本中、実に7本がアニメ(図表1)。テレビでも『おそ松さん』のような成人女性に支持される深夜アニメなど、人気作品が複数生まれている。
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