一緒に暮らせないのなら、いっそこの子と死のう──。飼い猫・祐介君を抱えての入退院生活が続き、精神的に追い込まれていた澤田富與子さん(73)。その澤田さんを救ったのは、全国でただ一つの、ペットと一緒に入居できる特別養護老人ホームだった。

猫の祐介君はホームにすぐに慣れ、澤田さんも元気を取り戻していった(撮影:梅谷秀司)
京浜急行線の横須賀中央駅から車で20分。緑に囲まれた住宅街に、社会福祉法人心の会が運営する特養「さくらの里 山科」はたたずむ。4階建ての2階が犬・猫と暮らせるフロア。高齢者40人と、15匹の犬・猫が同居している。
澤田さんと祐介君との出会いは10年前、捨てられる寸前だった子猫を見掛けたときだ。生まれてからいつも犬と一緒に生活してきた澤田さんにとって、動物との生活は当たり前。腰痛で犬の散歩は難しいけれど猫ならば、と迷わず引き取った。
ところが一緒に暮らし始めて6年経った頃、立って歩くことがままならなくなる。倒れてしまうこともしばしば。子どものいない一人暮らしだが、「祐介が背中に手を回して起こそうとしてくれた。自宅の階段を上がるときにも2、3段上にいて誘導してくれた」という。
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