愛犬・猫を失った飼い主の悲しみを表現する言葉として「ペットロス」がある。ペットの位置づけが愛玩動物から家族の一員へと変わり、ペットの寿命が延びて一緒に過ごす期間が長くなったことが背景になり定着した感がある。だが、その理解はまだ十分とはいえない。
帝京科学大学の濱野佐代子准教授(生命環境学部アニマルサイエンス学科)によると、1990年代からペットロスに関する論文が海外で増えてきた。だが心理学の専門家の間では今なお明確な定義はないという。濱野氏の場合は、「愛着対象であるペットを死別や別離で失う“対象喪失”の一つで、それに伴う一連の苦痛に満ちた悲哀もしくは悲嘆の心理過程」としている。
ペットロスに伴う心理過程(心の動き)は、人が自身の死に直面したときや近親者を失った際のモデルを基に説明されることが多い。よく引き合いに出されるのは、スイスの精神科医キューブラー・ロスが、死に至るまでの人間の心の動きを研究して提唱した「死にゆく過程の心理的段階」だ(図表1の下)。
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