4月4日、衝撃的なプレゼンテーションに財務省4階の会議室は一瞬静まり返った。
この日開かれたのは財政制度等審議会の財政制度分科会。社会保障をテーマに、ゲストスピーカーとして日本赤十字社医療センターの國頭(くに とう)英夫・化学療法科部長が招かれた。國頭氏は肺がん治療の最新動向を説明した後、こう切り出した。
「この薬を1年間、肺がん患者5万人に使うと、1兆7500億円になります。あの幻の国立競技場が七つできる。この薬があと二つ出てくると5兆円。日本の防衛予算が全部飛ぶくらいのことになります」
この薬とは肺がんの最新治療薬・オプジーボのことだ。國頭氏の試算では、体重60㌔㌘の人にこの薬を1年間投与すると、3500万円かかる。従来高価だとされていた最初の分子標的薬・イレッサが245万円、アレセンサが1000万円弱かかるのと比べてもケタ違いに値が張る。
日本の医療費は年間約40兆円。このうち薬剤費に9兆円をかけている(図1)。一つの病気に対する一つの薬に1兆円単位のコストがかかると、日本の医療財政は持続可能でなくなることは明らかだ。
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