がんになったら家計はどう変わるのだろうか。具体的に、二つの事例で見てみよう。
専門商社勤務のAさん(54)は、会社の健康診断で胃がんが見つかった。ステージ(進行度)は1(初期)~4(進行)のうちの2A期で、5月にがん摘出の手術を受けた。これから再発防止の術後薬物療法を受ける予定だ。
できるだけ早く職場に復帰したいと考え、開腹手術に比べ身体への負担が軽い腹腔鏡手術を選択した。検査のための通院や入院中、自宅療養中も含め、今年は年次有給休暇や病気休暇を消化する形で、収入をあまり減らさずに済みそうだ。
ただ、薬物療法の副作用がどれだけ仕事に支障を来すのかがわからない。状況次第では、査定やボーナスなどに響く可能性が高いのではないかと危惧している。
パートで働いていたAさんの妻は、病院の付き添いや世話などで仕事を辞めざるをえなくなった。毎月約8万円の収入がなくなったのは、家計にとっては大きな痛手だ。
図1は、Aさんががんに罹患(りかん)する前と、罹患した後の1カ月の家計の収支の状況を示したものだ。罹患前は、子どもの教育費が占める割合が大きいものの、妻のパート収入で賄う形で1万5000円の黒字だった。ところが罹患後は、33万円もの赤字に転落した。
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