長年にわたり担当してきた事業から会社が撤退──。そのとき、技術者はどう生き残るのか。研究分野を変えて見事に再ブレークを果たしたのが、日立製作所研究開発グループ技師長の矢野和男氏だ。
矢野氏は東京・国分寺にある日立の中央研究所で半導体分野の研究開発に携わってきた。1993年、コンピュータの小型化と大容量化を可能にし、消費電力を抑えられる単一電子メモリの室温動作に世界で初めて成功するなど、数多くの功績を残した。しかし2002年に日立が半導体事業から撤退し、事実上の社内失業となってしまう。
当時、中央研究所には半導体技術者が200人はいた。一部は事業移管先のルネサスエレクトロニクスへ移ったが、私に選択の自由はなかった。外からの誘いもあったが、当時は部長で部下もいたし、研究自体は楽しかったから残ることにした。
03年から新しい挑戦を始めるに当たり、昔から何度も読んできたドラッカーの本を手に取った。「20世紀は肉体労働の生産性が50倍に上がり、21世紀に期待される最大の貢献は知識労働の生産性を同様に上げること」と書いており、これだと思った。われわれのテクノロジーで21世紀に何かできないか。半導体の経験から小さな端末を造ることが得意だったので、コンピュータをあらゆるところにつけてデータを収集しようと考えた。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら