最近の日本人科学者によるノーベル賞の連続受賞は、国民にとって自信と誇りを取り戻す出来事だった。しかしその一方で、気掛かりな事実がある。日本の学術論文数が惨憺(さんたん)たる状況になりつつあるのだ。
学術論文数は、その国の大学や研究所といった公的研究機関の研究開発力を反映する最も基本的な指標だ。ところが日本の学術論文数は、2000年を過ぎた頃から全体として低迷している。海外諸国が軒並み論文数を増やす中で、国際競争力がどんどん低下しているのだ。
学術分野別に論文数を検討してみると、特に「工学」の論文数が著しく減少している。かつての掛け声である「科学技術創造立国」の牽引役として今まで健闘してきた分野ほど、落ち込みが激しい。大学の工学部の研究開発力は、企業を含めたイノベーション力とも密接に関係するので、今後の日本の産業競争力という観点からも懸念材料だ。
トムソン・ロイター社の学術論文データベース「InCites Bench-marking(インサイツ・ベンチマーキング)」は、これまで同社の研究分類に基づく比較・分析しかできなかったが、今年3月から、日本の代表的な競争的研究資金である「科学研究費(科研費)」の研究分類に基づき比較・分析ができるようになった。あらためてわかったことは学術論文の量・質の低下である。以下、データに基づき詳述する。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待