東京都在住の佐藤明美さん(仮名)は、愛知県に住む70代の父に呼び出された。母はすでに亡くなっており独り暮らしだ。久しぶりに会った父の隣には、見知らぬ中国人女性が座っている。出稼ぎで日本に来ており、近くにあるスナックで働いているそうだ。
「この人と一緒になる」。父は唐突に言った。しかも父は「結婚するなら家を用意してほしい」と迫られ、女性名義で家を購入していた。いずれ父が亡くなれば、再婚した女性が法定相続分として財産の半分も持っていってしまう。佐藤さんは父のほれ込みようが心配でならない。
伴侶を亡くすなどで独り暮らしをしている高齢の親が突然「再婚したい」と言い出したらどうするか。「うちの親に限ってそんなことはない」と言い切ることができればいい。だが厚生労働省の調査を見ると、60歳を超えてから再婚する人たちは意外と多い。特に男性では80歳以上も400人超とそれなりの数に上る。
相続分の減少を懸念し親の再婚を心配する子
事業承継や相続の問題を数多く解決してきた、東京永田町法律事務所代表の長谷川裕雅弁護士は、「遺言作成や相続対策の相談のため事務所を訪れる方の多くは、相続をする側の世代。遺言を書く本人が来ることは少ない」と話す。平均寿命を考えると、70~80代になれば遺言作成や相続対策が差し迫った問題であることは自明の理。だが年老いた親は行動を起こさない。業を煮やした息子や娘が、何とかしてほしいと弁護士の元を訪れるというわけだ。
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