定年まで頑張ってくれたのだから、多少のお酒は大目に見てあげたい──そう考える高齢者の家族は少なくないだろう。だが、習慣的な飲酒には高齢者の生活と人格を一変させる危険性があることを忘れてはいけない。
兵庫県のAさん(男性)は60歳で定年を迎えた。子どもはすでに独立していたので、「二人で仲良く頑張ろう」と妻と誓い合って第二の人生をスタートさせた。ところが50歳ごろから習慣化していた飲酒の量が退職後に急増。何度も節酒を試みたものの失敗、その揚げ句には「自分はこんなに意志が弱い人間ではない。やめられないのは、酔った私を見る妻の目つきのせい」と考えるまでになった。体の悪い妻に暴言を吐き、その呵責の念を忘れようとさらに飲むという悪循環に陥ってしまった。
「仕事に行かなくてもよい、人に会わなくてもよい」。そんな解放感から飲酒量が増えたのは、徳島県のBさん(同)。もともと口下手で人見知りする性格のため、現役時代はこの弱みを補うために酒の力を借りていた面があった。それが58歳で退職した後は、朝から酒を飲んで泥酔するように。思考力を失い、足腰も弱り歩くのもやっとなのに、酒を買うためであれば夢遊病者のように外出する日々だった。
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