自らプログラミングをすることのメリット
――東日本大震災の被災地でもプログラミングのイベントを行っていますね。
はい、2年前に被災地の子どもたちにワークショップを提供していました。
「地域の人材を育成していくことが、被災地の復興につながるから、被災地で開催してほしい」という声をいただいて、スタートしました。ワークショップについて、学校の先生方からは「こんなに夢中になって、輝いている子どもたちを初めて見た」というお話をたくさんいただきました。
約600人の子どもたちが参加してくれましたが、単発的なイベントとして終わってしまわないように、地域の教育系の団体や教育委員会などとの連携を大切にして実施するとともに、地域の人がその取り組みを継続できるような研修や教材をパッケージも作ってきました。
その経験を踏まえ、Googleの後援により、プログラミング学習を本格的に全国に広げるプロジェクトPEG(Programming Education Gathering)を開始しました。昨年10月にはGoogleのエリック・シュミット会長も来てくださり、今年1年で2万5000人の子どもたちにプログラミング授業を行うという記者会見を行いました。
これまでにすでに約1000人を対象に指導者向け研修会を開催し、約90の学校や団体と連携して約2万人の子どもたちにプログラミング学習を届けてきました。たとえば、品川区の京陽小学校では、全校児童約350人に手のひらサイズのコンピュータ、ラズベリーパイを配布し、国語・算数・理科などの教科授業においてプログラミング学習に取り組んでいます。
PEGが最も大事にしているのは「gathering」でして、学校も、ミュージアムも、NPOも、家庭も、地域も、企業も、自治体も、みんなで集まり、プログラミング学習の輪を広げていく運動をしていきたいと思っています。すでに愛知gathering、横須賀gathering、北九州gathering、郡山gatheringなど10地域でPEGの輪が広がっています。
――そもそも、プログラミングによって、何ができるようになるんでしょうか。
プログラミングの授業を行っているというと、親御さんたちから「プログラマーを育てたいのですか?」という質問をよくいただきます。私たちが伝えたいのは、プログラミング「を」学ぶことではなく、プログラミング「で」学ぶことです。このプロジェクトを通じ、論理的に考え、問題を解決し、他者と協働し、新しい価値を創造する力を養ってほしいと願っています。
自動車だったら、メカニズムを知らなくても運転できますね。コンピュータもそうですが、コンピュータがほかの領域と違うのは、コンピュータが、パソコンを超えて、あらゆるモノ、分野、環境に溶け込み、定着し、それらを制御するものとなっていることです。
ご飯を炊くときも、洗濯をするときも、銀行でおカネをおろすときも。生活・文化・社会・経済のあらゆる場面で、私たちの生活をコンピュータが支えていて、そしてそれらの仕組みはすべてプログラミングによって生まれている。その基礎メカニズムを知っていることは、車などほかの道具とは重要性が格段に異なると思います。コンピュータに関する原理的な理解があるかないかによって、社会のありとあらゆる場面における対処能力が、大きく変わってくるはずです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら