自民党と公明党がすったもんだの議論をした揚げ句、消費税に軽減税率を導入することを決めた。低所得者対策が名目だが、「高所得者にも恩恵が及ぶ」「軽減税率の対象となるかどうかの線引きが恣意的で政治的な利権を生む」など、批判の多い制度だ。
たとえば平均的な家計は食料品(酒類、外食を除く)に毎月約4.6万円を支出する。支出全体に占める割合は約18%。だが、図1のように、酒類、外食を除く食料費は年間収入が多い世帯ほど金額が大きく、高所得者ほど軽減税率の恩恵を受ける。
線引きについても、その恣意性がさっそく現れた。朝日新聞や読売新聞など宅配の日刊紙は軽減税率の対象になる一方、駅売りが多いスポーツ紙や夕刊紙などは対象外となった。同じ新聞でも、政治力の有無で扱いに差が出るとの疑念を招きかねない。
だが何よりも問題なのは、肝心の財源の当てもなく、軽減税率導入で自民党と公明党が合意したことだ。財源候補としては今のところ、医療や介護、保育などにかかる家計の自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」の導入先送りが決まっている。これにより4000億円の財源が確保できる見通しだが、軽減税率導入によって必要な財源は1兆円。6000億円ほど足りない。政府・与党は「今後1年かけて検討していく」とするのみで、今のところ財源のメドはまったく立っていない。
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