米FRBはインフレ・ターゲットを採用する可能性が高い--ディビッド・ウェッセル ウォール・ストリート・ジャーナル 経済担当エディター
--米国政府が妥当だと考える失業率5%程度になるまで、金融政策の出口が縛られるということにならないか?
それはない。失業率が正常化するまで連銀が待つということになると、金融政策そのものが長期化してしまう。その間に、たとえばインフレ率が期待よりも高い水準になってしまったり、資産バブルが発生したりする可能性もある。だから、その前に出口を考えることになるだろう。さはさりながら、1年ないし2年ぐらい経済成長に応じて考えていくことになるだろう。
--インフレ率のコントロールは可能か。国内の議論と自身の見解は?
インフレの可能性はいまの経済指標から見るとほとんどない。しかし、国民の目にはインフレ状況に見える。目に見えるものの価格が上昇している。ヘルスケア、食品、教育や大学の授業料など。心理的な面で、値段が上がると連銀のせいだと思うようになっている。
CBSの報道番組「60ミニッツ」のインタビューでバーナンキが100%インフレを回避することができていると話した。それは言いすぎだ。安心させようとして100%という言葉を使ったのかもしれないが、かならずリスクはあり、中央銀行が100%と言い切れることはない。サプライズもある。
--米国でも銀行の貸し出しは減っている。おカネが準備預金に積み上がるだけではないのか。実際に市中にお金が回るのか。
バーナンキは銀行システムを通らない形で対策をしていると説明している。国債を買うことによって長期の金利を下げる。これにより、住宅ローンなどを借りやすくする。企業によっては融資を受けやすくなる。事業が回り、株価は上昇し、ドルが下がって、輸出がしやすくなる。
障害もある。ひとつはネガティブエクイティの問題。借金が自分の収入よりも大きいと、リファイナンスができないので、おカネが使えない。また、経済に対する信頼感が失われている。どんなに簡単に借り入れができるとしても、人々が借り入れをしないというようなこともある。