米FRBはインフレ・ターゲットを採用する可能性が高い--ディビッド・ウェッセル ウォール・ストリート・ジャーナル 経済担当エディター
米FRB(連邦準備制度理事会)が11月3日に発表したQE2(量的緩和第2弾)の効果に注目が集まっている。QE2は2011年6月末までに6000億ドルの米国債の追加購入を行うという大規模な金融緩和だ。
米国でのQE2、バーナンキ議長に対する評価について、“In Fed We Trust”(『バーナンキは正しかったか?FRBの真相』(朝日新聞出版)で、日本でも知られるディビッド・ウェッセル氏に話を聞いた。
--QE2について、米国ではどのように評価されているのか。
依然として米国の失業率が高く、物価は下がってきている。FRBとしては雇用を最大化することと、物価の安定を守るという2つの使命から、何かしたほうがいいということだ。QE2で魔法のように解決するとは思われていないし、緩やかな影響しかないかもしれないが、何もしないよりはよい。
いくつかのリスクは抱えている。ひとつは、QE2がうまくいかなかった場合、FRBに力がないのではないかと思われ、信頼性を失ってしまうこと。もうひとつの批判は、量的緩和をするとインフレ率が急に上がるのではないかというものだが、それについては、私は、ないと思う。
今回の措置で議会や大統領が予算や財政赤字問題の解決しなければならないというプレッシャーがなくなるのではないかという心配をする人もいる。
結局、ブッシュ大統領は減税延長を決めたので、それと相まってQE2が成功し、成長率が上がって失業率が下がるかもしれない。しかし、長期金利が上がるだけになってしまうこともありうる。
--失業率を引き下げるのは難しいのではないか。米国でも雇用をFRBの使命から外すべきだと言う議論がある。
基本的に難しい使命だと思う。中央銀行はインフレのコントロールはしやすいけれども、失業率のコントロールは困難だ。だが、まったく何もできないというわけでもない。経済成長率が2.5%では、急速に失業率を下げることは難しい。連銀が短期的に何か対策を打って、失業率を下げる必要はある。