授業ではなるべく前のほうの席に座り、わからないときは首をかしげてポカーンと口を開けたまま動かなかった。はっきり、「え、ちょっとわかりません、もう1回言ってください」と言うこともあった。特にカネ系の授業のときは、口を開けてフリーズしていることが多かったため、先生のほうから「どこまで戻ったらわかる?」と聞いてもらえるようになった。
もう、こうなりゃ必死だ。ほかの人の学びの邪魔をしているかも……なんて考える余裕はない。とにかく元を取らねばならぬ! 「○○の説明のところまではわかったんですけど、なんでそこでそういう計算になるんですか?」と、いったん進んだものを戻って、再度解説してもらったりもした。
とは言え、心は小市民。授業の流れを止めてしまって煙たがられているかもしれない……とノミの心臓はつねにバックバクである。休憩中のトイレでエリート女子から声をかけられる。……どきっ! シ、シ、シ……シバかれるかもしれない!!
こんなかわい清楚系美人だけど、まさか、私に根性焼きをする気じゃないよね?! ヒヤヒヤしていると、かけられたのは「実はあのとき、私もわからなかった、ありがとね」という言葉だったりした。思わず脱力である。ああそっか、「わからない」って大声で言えない人多いんだ……。
それで開き直りが加速した。わからないものはわからない!と言えるキャラで何が悪い。プライドで飯は食えぬ。かっこつけても元は取れぬ。
しかし、もちろん人間関係は、ギブ・アンド・テイクが基本である。だから自分がギブできる機会には最大限貢献できるように努力した。授業中のグループディスカッションや勉強会で板書の必要があったときは、率先して書記係を引き受けるようにした。
なんせ男性が多い場だ。みなさん口と頭のほうが早く動くため、書き文字がミミズのはったような芸術作品になってしまうのである。私は口と頭はスローペースでしか動かなかったが、手だけは早く動いたので図解でまとめたりして、これはこれで重宝されていた(……と信じたい)。
貧困女子の底辺を知っている強み
起業家の人にも通じるのだけど、非エリートどたばたキャリア組は、何かしらおカネに苦労した経験がある人が多い。かくいう私は、仕事で体を壊したときに退職勧告とも取れる人事異動を受けるという、人生のエスプレッソとも言うべき苦い経験がある。PCは使用禁止、上司からの指示は「とりあえず倉庫でも掃除しておいて」だった。
同時に、東京でひとり暮らしをするにはかなり厳しい水準にまで給料が下がった。実家の両親にタンカを切って故郷を出てきたのに、「手取り給料引く家賃が8万5000円以下」という貧困女子の定義に当てはまっている。
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