集団的自衛権より、靖国参拝のほうが危ない
中国きっての分析家がみる歴史問題のリスク

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――来年には中ロが対日戦勝70周年の記念式典を共同で開くことになっています。韓国も合流するという見方もあります。

「自民党が勝ったとしても、国民が安倍首相を支持しているとはいえない」と語る楊氏(撮影:尾形文繁)

まだその詳細はまったく決まっていない。やること自体は決まっているが、どういう規模の、どんな性格の式典になるかは今後の日中関係次第だ。

だが、中韓が一緒にやることはないだろう。韓国は米国の同盟国だ。反ファシズム戦争の記念式典のため、公然たる対中協力をするというところまで朴槿恵大統領が踏み切れるかというと、難しいのではないか。

――これまで中国は「日本の政治指導者と一般の日本人は別」という2分論をとってきました。しかし、中国が右傾化を指摘する安倍政権が総選挙で再び選ばれれば、その論法が成り立たなくなるのでは。

私見では、指導者と国民の区別はまだ必要だ。日本は間接選挙だから、自民党が勝ったからといって、必ずしも一人ひとりの国民が安倍首相の路線を支持しているとはいえない。実感としても、大多数の日本国民は右傾化していない。右傾化というのは政界の話で、国民は「保守化」していると考える。

安倍首相は戦後2番目に右

――右傾化と保守化はどう違うのでしょうか。

保守化とは、現状を維持したいという心理が高まった状態だ。国際社会における日本の政治的な地位、地域における立場を失いたくないという国民の心理が、安倍首相の対中強硬姿勢と一部だけ重なっているのだと思う。

日本における右傾化とは、侵略戦争の歴史を否定し、美化すること。また、戦後日本が一貫してとってきた平和的発展の路線を否定することだ。

安倍首相は戦後歴代の首相のなかでもっとも右、あるいは祖父の岸信介元首相についで2番目に右だろう。小泉純一郎氏は首相在任中に靖国神社を6回参拝したが、思想的な根源は安倍氏のほうが深い。小泉氏は劇場型政治のパフォーマンスとして参拝していたが、安倍首相の参拝は自らの信念に基づいたものだとみている。 

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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