集団的自衛権より、靖国参拝のほうが危ない

中国きっての分析家がみる歴史問題のリスク

楊 伯江(ヤン・ボーチアン)●1964年天津生まれ。北京の国際関係学院卒業。法学博士で専門は日本政治。ハーバード大学客員研究員、中国現代国際関係研究院日本研究所長などを経て中国社会科学院日本研究所副所長に。中国を代表する日本ウオッチャーの一人。(撮影:尾形文繁)

――次のステップとしては、日中韓首脳会談の再開が期待されています。

まずは3国間の外相会談などで一定の基礎がつくられたうえでのことだ。そのために、もっとも重要なのは、歴史問題で日中韓が折り合えるどうかという点だ。

歴史問題をめぐる安倍晋三首相の言動は、中国人には理解できない。領土問題にそれぞれの立場があるのはわかるが、日本の歴代政権が繰り返し表明してきた歴史認識を覆す必要がなぜあるのか。

4つの合意項目の2番目にある、「両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた」という部分で靖国問題は明確に言及されてはいない。しかし、そのことは靖国問題に関する中国の立場の後退を意味しない。歴史問題を細かく書けば切りがないから簡潔にしているだけのことだ。

安倍首相の靖国参拝を警戒

――安倍首相の靖国神社参拝を今も警戒しているということですか。

現段階でその可能性は5割以下だろうが、排除はできない。一年くらいたって日中関係が再び行き詰ったら参拝する危険があると、依然として心配している。中国にとっては首相、外相、官房長官は靖国に参拝しないというのが「底線」(譲れぬ一線)だ。

今後も靖国神社の春の例大祭や8月15日などの節目には注目していくだろう。また、終戦70周年となる来年、「村山談話」にかわる「安倍談話」を出すのかどうか。出すとすれば中身はどういうものになるのかも注意深く見守る。

――来年には集団的自衛権の関連法案が国会に提出されます。この問題について、中国はあまり態度を明確にしていません。

集団的自衛権のことは、歴史問題に比べれば二義的だからだ。歴史問題で日中が対立すると、テレビなどメディアで騒ぎが広がって中国の民衆の怒りに火が付く。だが、集団的自衛権は専門的な問題なので理解している人が少ない。今年7月1日に閣議決定された内容を見る限り、武力行使の3要件などの制限もついている。法制化が進む過程での中国側の反応は、そのときの日中間の雰囲気しだいだろう。

――日中関係では歴史問題が最重要の課題ですか。

もちろん、そうだ。日本との協力関係を積極的に構築しようとしても、また裏切られるのではないかと中国と韓国は慎重になっている。日本を信用できるかどうかの目安は、安倍首相がもう靖国神社に参拝しないこと、そして村山談話を踏襲することだ。

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