【産業天気図・鉄道・バス】東武は今期のスカイツリー効果顕著、来春以降は業界全体で運輸・流通の業績反転、「晴れ」に改善
東海旅客鉄道(JR東海)は、東海道新幹線の輸送需要(人キロ)が上期に1.2%増となるなど、ビジネス需要に明るさがでてきた。だが、雇用状況の劇的改善に至らない以上は、10月以降も在来線の通勤需要を中心に輸送客数は力弱い状況が続きそうだ。下期の流通事業などに関しても厳しい見方を崩していない。 とはいえ、稼ぎ頭の東海道新幹線のビジネス需要が回復していることから、今11年3月期10%台、来期7%台の営業増益が期待できそうだ。
JR東・東海に比べ、収益低迷が目立っていた西日本旅客鉄道(JR西日本)も、上期の営業利益は47%増の647億円と大きく改善した。
一方、私鉄は上場20社中、四季報予想において今期営業増益となるのが11社、減益が9社ときっ抗している。私鉄全体の増益幅は今期が2%台、来期が4%台。新幹線や大型の駅ナカ物販、商業・賃貸不動産などの堅調が下支えする本州JR3社に比べると、収益回復力はやや見劣りがする。
私鉄で特に注目されるのが、東急電鉄と東武鉄道だ。
東急電鉄は今上期の営業利益が前上期比81%増の412億円となり、会社の期初計画275億円を大きく上回る結果となった。低簿価保有地の売却など高収益案件が重なったため、不動産部門の営業利益が8割増の156億円に急増した。ただ下期は一転して営業損益が前下期比7割減の92億円に急落する。東京のホテル・賃貸オフィス完成などに伴う開業費が増える上、利益率の高い売却が減るため、不動産部門の営業損益が17億円の赤字に転落するのだ。
会社全体の下期利益は大幅減益となり、今通期営業利益も4%程度の減益に止まる見込みだ。来期は新規賃貸物件の上乗せが寄与し、7%程度ではあるが4期ぶりの営業増益に転じるもよう。渋谷駅周辺、横浜駅西口、二子玉川の2期など大型再開発を併行で進めるが、流通・ホテル・レジャーなどグループ収益力が細る中での大型開発事業推進だけに、落ちこんだ収益体質をどう再構築していくのか「私鉄の雄」の実力が問われている。