賞味期限を4倍長くする魔法の牛乳パック

ロングライフ商品が経済にも社会にも優しいワケ

菌の存在を極限まで排除する製造方法は徹底したものだが、ロングライフ牛乳が通常の商品と何よりも大きく違うのは、油脂の酸化対策といえるだろう。秘密は牛乳パックの構造にある。通常パックとの違いは両方の紙パックを切断してみると一目瞭然だ。

普通の牛乳パックの構造は紙を内側と外側のポリエチレンコートが挟み込む3層構造になっている。対してロングライフ牛乳の牛乳パックにはアルミ箔が加わる4層構造だ。通常の牛乳パックではわずかな隙間から酸素が入ってしまうのだが、アルミ箔を1枚入れることで酸素を通さなくしているのだ。これが常温保存でも賞味期限2カ月を可能にした仕組みである。

製造ラインを丸洗い!

ロングライフ商品はほかにもある。例えば最近売り上げを伸ばしているのは、ヤマザキの真空パウチ惣菜。賞味期限はなんと30日以上だが、パッケージを見るとアルミ箔を挟んでいる様子はない。ヤマザキの担当者に聞いてみたところ、意外な回答が返ってきた。なんと、「賞味期限を延ばすこと自体はそんなに難しいことではない」。

ヤマザキの真空パウチ総菜。 TBS「この差って何ですか?」(司会:加藤浩次)

ポイントは加熱処理の温度。殺菌温度を上げることで、実は30日どころか45~60日に延ばすことだってできるという。だからといって、ヤマザキはただ単純に加熱処理の温度を上げてはいない。惣菜は「素材の味」が大事な要素。加熱処理の温度を上げれば、野菜の繊維が壊れて食感が失われ、マヨネーズ系調味料の分離が起きるなど美味しさが失われてしまうからだ。

ヤマザキでは味へのこだわりから、素材は新鮮な泥つき野菜を仕入れており、通常の食品工場がやっている除菌対策では、まともな品質管理ができない。加熱処理の温度を極限まで下げつつ、素材感にもこだわりたい。かつ、賞味期限も延ばしたい。不可能にも思えるこの難題に、ヤマザキはある方法で答えを出している。

それは3時間おきに行われる製造ラインの清掃作業だ。惣菜を製造している機械をネジ1本まですべて外して分解!全ての部品を30分かけて丸洗いし、熱湯殺菌。オートメーション化が進んでいるイメージの食品工場だが、この3時間おきに行われる30分の清掃作業は、すべて従業員の手作業で行われるというから、なんとも涙ぐましい努力である。

一般的な話だがロングライフ商品は通常商品と比べて、価格が特別高いワケではないようだ。ほぼ同じ価格設定の商品も少なくない。製造コストがかかる一方で、長く棚に置けたり、廃棄ロスを抑えたりといった流通コストが下がるというカラクリがある。食品業界においては賞味期限切れ食品を大量に廃棄している現実があり、ロングライフ商品は社会的な損失も軽減する。消費者にもメーカーにも社会にも優しいのである。

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