基礎研究への支援を重視 日本の主要大学にも関心--AXAリサーチファンド責任者 アンジュリエット・ハーマン
ほかのアジアの国では、特にインドに興味を持っています。香港とシンガポールもお互いにライバル意識が強く、国外から優秀な人材を呼び込んだり、国内の人材育成に力を入れたりしており、注目しています。
中国にもよい研究はありますが、今のところ進出は考えていません。その理由は、AXA本体の事業展開がまだ初期段階であるためです。先日、中国最大手の中国工商銀行との提携を発表したばかりであり、まずはビジネスサイドの展開が軌道に乗るのを待ち、その後ファンドの進出も検討したいと考えています。
──北米、特に米国の大学についてはいかがですか。
現在、米国の研究機関への支援は行っていません。米国では私的寄付が盛んで、研究支援の土壌が発達しています。研究機関は、優秀な研究者を引き付けるのに必要な資金を潤沢に持っています。当ファンドとしては、少なくとも最初の5年は、米国に集中している世界のトップ研究者を世界に拡散させて、バランスよくさせることができるような支援をしたいと考えています。
ただ、ヨーロッパの研究者に対して、米国で博士号やポストドクターを取るための支援を実行したケースが、これまで2件ほどあります。なお、米国ではAXAグループの子会社・AXAエクイタブルが、すでに単独で、社会問題などを研究する研究機関に対して多額の寄付活動を行っています。
──今後、どういう研究分野への支援が重要になりますか。
経済的なメリットが短期的にもたらされる新たなテクノロジーに目が行きがちですが、基礎研究の重要性を忘れてはいけない。基礎研究には、どのような成果が見込まれるのか誰にもわからない未知の側面があり、有効な結果が得られるかどうかについても不確実性があります。
ただ、そういう研究を10年あるいは20年と続けていく中で、本当の新発見が生まれてきます。私は、すぐ応用が利くテクノロジー分野のみならず、基礎研究への支援も、同じく重要と考えています。
(聞き手:木村秀哉 撮影:田所千代美 =週刊東洋経済2010年12月4日号)
Anne−Juliette Hermant
仏高等師範学校、パリ政治学院卒、仏文学博士。大学で教鞭を執った後、行政や企業のトレーニング・人材開発に従事、AXAグループ入社後はトレーニング部門プログラムディレクターに。2008年から現職。
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