基礎研究への支援を重視 日本の主要大学にも関心--AXAリサーチファンド責任者 アンジュリエット・ハーマン

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基礎研究への支援を重視 日本の主要大学にも関心--AXAリサーチファンド責任者 アンジュリエット・ハーマン

世界最大級の保険グループ・アクサが2008年に設立した「AXAリサーチファンド」は、グローバルに学術・研究の振興を目指す基金として知られる。資金規模1億ユーロ(約130億円)は、単一企業の研究基金としては世界最大だ。来日したファンド責任者のアンジュリエット・ハーマン氏に今後の方針や、日本での展開などについて聞いた。

──これまでの実績、資金提供先について教えてください。

AXAリサーチファンドは、5年間で1億ユーロを拠出するというものです。過去2年半で全体の4割強に当たる4200万ユーロを拠出しました。拠出先は現時点でヨーロッパが大半ですが、今後はアジアにも展開していきたいと考えています。

支援先の研究分野は、環境リスク、生活リスク(健康リスク、長生きリスクなど)、社会経済リスクの3分野で、各分野にそれぞれ3分の1ずつ拠出しています。

──研究分野ごとの支援の中身や活動内容は。

現在までに約200のプロジェクトを承認してきました。最大規模の支援を行っている、いくつかの大学の研究について紹介します。

フランスの理工科学校(エコール・ポリテクニーク)には150万ユーロ以上を拠出し、心血管疾患の治療をテーマにした寄付講座を開設しています。化学分野では、仏東部のストラスブール大学で超分子化学の研究をしている研究室を支援しています。

イギリスでは、ニューキャッスル大学で「健康な老い」をテーマとした寄付講座を開設しています。スペインのバルセロナ大学では、マクロ経済のリスクに関する寄付講座を開設、財務リスクにどう対処するかという、まさに金融に関連する分野の研究を支援しています。

寄付講座の設置に当たっては、まず、その大学が当該研究分野のトップクラスの著名な教授を招聘できるよう、ファンドが資金を提供します。大学は、その教授が研究活動を行えるような環境を学内に整えるわけです。寄付講座を設置すると、教授が行う研究活動への支援は恒久的なものとなるため、非常に高額な資金がかかります。有能な研究者である教授個人への支援といえます。

環境リスクの分野では、寄付講座はまだありません。特に気象科学の分野では、研究者たちは当初からチームでの研究を念頭に置いており、個人への支援ではなく、プロジェクトへの支援を依頼してくるケースが多いのです。ただ、火山に関する研究で寄付講座を設ける話が出ており、近い将来、この分野でも寄付講座が実現されるかもしれません。

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