国家であることが難しく、国民であることはそれ以上に難しい時代である。国民の「忠誠」と交換に安全と基本的な福祉を古くから提供してきた国民国家が、国内で、また国際問題の基本単位としても脅威にさらされている。
新しい種類の忠誠と連合が国家の伝統的役割に異議を唱えている。いくつかは地理的なものである。ヨーロッパだけでも、少なくとも40地域の“次のスコットランド”が、いま自分たちがいる国からの何らかの分離を模索している。単に宗教や民族ではなく、共通の商業的利害や政治的利害、またはその他の利害に基づくものである。NGO(非政府組織)のサポーターをしている者は、政党のメンバーよりもはるかに多い。
ノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・セン氏は、複数のアイデンティティとともに生きることを学び、市民権と忠誠の多様性を享受することで、われわれはさらに繁栄するだろう、と述べている。
先進国の統治モデルへの批判
しかしこの多様性は無害なものではない。欧米諸国の大半では、国家はますます国民を失望させ、多くの場合、手が届かないような福祉提供のモデルに固執している。世界の経済成長が立ち直る過程で、先進国の高コストで高税率、高利益な統治モデルが批判にさらされている。
欧米諸国の欠点は、ほかの地域と比較した場合、極めて明白である。中国は「経済安全国家」を体現している。海外での投資力を用いて、自国の産業化を支える資源やエネルギーを確保しつつ、GDP(国内総生産)成長率と国民の支持を維持するために、国内貯蓄を家計消費に導くことを目指している。
ロシアは古典的な国家の安全を重んじる国であり、欧米の不安をおもちゃのようにもてあそぶことで、ウクライナへの支配力を強め、公認の国家主義によって国内の反対を抑圧している。
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