安倍晋三首相は11月18日、消費税の10%への引き上げを2017年4月まで延期して、21日に衆議院を解散、12月14日の総選挙に踏み切ると表明した。増税延期は正しい選択だ。
経済政策においては、正しい行動を間違った時期に、あるいは間違った順序で行えば大惨事につながりかねない。
日本がどこかの段階で増税をしなければならないことを否定する者はいないだろう。だが、消費税以外に、もっと適した増税対象は複数ある。日本がまずするべきは成長の回復であり、増税はあくまでその次だ。
8%増税の悪影響を過小に見積もった
延期すべき最大の理由は、1度目の増税がわれわれに示した事実に見られる。財務省や日本銀行は安倍首相および国民に対して、増税による個人消費やGDPに対する抑制効果は限定的かつ短期にとどまると約束した。だが、これはいずれも完全な見当違いであった。4月から9月にかけての物価調整後の個人消費は、前年比で5.2%減少していた。9月は前年同月比4.9%の減少だ。
消費者の反発は1997年よりもひどい。今年9月の名目個人消費は前年同月比で5.5%減少している。一方97年9月の消費は前年同月比で2.7%増加していた。
今回の低迷の原因は所得の減少だ。少なくとも1人が働いている世帯の、インフレ調整後の9月の可処分所得は、前年同月比で5.8%減少している。賃金がインフレや増税に追いつけていないのだ。
先延ばしした場合の市場の深刻な反応をうたうさまざまな警鐘は、政治家に思いどおりに動いてもらうために官僚が使っている脅し文句にすぎない。
官僚や緊縮財政派は、増税を先延ばしすれば日本の財政について投資家に疑念を抱かせ、株式市場の暴落を招く、と主張した。だが、新聞紙面に消費増税延期に関する憶測が載るやいなや、株式市場は07年以来の高値を見せたのである。
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