富士フイルム、次にM&Aで買うのはどこだ あの「エボラ出血熱」の治療薬もグループ会社

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古森重隆CEOは中期経営計画説明会で利益成長を加速させると明言した

「利益成長を加速させるための戦略投資としてM&Aを行っていく」。11月11日に行われた富士フイルムホールディングスの中期経営計画説明会で、古森重隆会長兼CEOはこう強調した。

今回の中計では2014年度~16年度の3年間で売上高を7.8%増の2兆6300億円、営業利益は過去最高となる2200億円(同56.2%増)に増やす計画を示した。具体的には、富士フイルムが力を入れる6つの重点事業分野のうち、ヘルスケア、フラットパネルディスプレイ材料など高機能材料、事務機事業を中心に収益を伸ばす考えだ。売り上げの伸びに対して利益の上昇幅が大きいが、「コストダウンなど、外から見えない部分で勝算があるからこその数字だろう」と、シティグループ証券アナリストの芝野正紘氏は見る。

M&A資金を2倍に増加

今回の発表で1つの目玉となったのが、3年間で4000億~5000億円をM&A資金に充てることだ。前回の中期経営計画では、M&A資金を年間500億~1000億円としていたので、この2倍の額を投じることになる。加えて今回、M&Aを「利益成長を加速させるための戦略投資」と位置づけたのも重要なポイントだ。

これまで富士フイルムは短期での業績寄与というよりも、長い目で見て会社の成長源となる企業を買収してきた傾向がある。たとえば、08年に買収した医薬品中堅の富山化学工業。今でこそエボラ出血熱に対する治療薬として期待される「アビガン錠」で注目を集めているが、当時は最終損失87億円の赤字会社の買収に投資家から疑問の声があがった。また、直近でも今年10月末に連結子会社化を発表したジャパン・ティッシュ・エンジニアリングも赤字が続いているが、再生医療製品開発という事業分野を有望視して取得を決めている。

が、今回の中計は、この“超長期戦略”から若干の軌道修正を示唆しているのではないか、との声が聞こえる。

その背景にあるのが、資本効率を表すROE(自己資本利益率)の重視化だ。同社にはかねて高い自己資本比率の反面、資本効率が悪いという批判が投資家から出ていることもあって今回、3年間でROEを4.2%から7%に上げるという目標を新たに掲げた。同時に配当、自社株買いを通じて3年間で2000億円強を株主還元に充てることも発表。「今までは利益を増やすことだけでROEを上げてきたが、これからは株主還元も増やすことによってROEの向上に努める」(富士フイルム広報)としている。

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