富士フイルム、次にM&Aで買うのはどこだ あの「エボラ出血熱」の治療薬もグループ会社

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 ただ、株主資本を減らすだけでは目標とするROEに到達するのは難しく、必然的に利益もこれまで以上に上げる必要がある。となれば、将来の事業の種を買うというM&A戦略から、すでに儲けが出ている企業を買収するという戦略に転換する可能性もあるというわけだ。前述の芝野アナリストは、「5000億という予算の大きさからして、たとえば小規模な買収を積み上げるよりも、営業利益100億円以上の規模の会社を数千億円かけて買収するというケースが考えられる。具体的にどこかというと難しいが、ヘルスケア分野でグローバル企業やその事業の一部を買う、というのはあり得る線だ」と話す。

そこで気になるのはヘルスケア事業の将来性だ。富山化学を買収した際の記者会見で古森CEOは、18年にはヘルスケア関連事業で売り上げ1兆円を目指すと明言していた。が、今回中計で発表された同分野の16年度の売上高は4400億円と、08年の計画からは大きな開きがある。

ヘルスケア事業を牽引するのは…

「アビガン錠」で一躍有名となった富士フイルムの医薬品事業だが、現在ヘルスケア事業を牽引しているのはX線診断装置を筆頭とした医療システムだ。ただ、今後医療システム事業で急激に売り上げを伸ばすのは容易ではない。メディカルシステム事業部長である後藤禎一氏はX線診断装置事業について「国内での去年の成長率は1ケタで、今後も2ケタ成長は難しい。欧米も医療費削減の流れで厳しい状況が続いている。新興国でどれだけ伸ばせるかがカギとなるだろう」と現状を語る。

一方、水面下では新薬開発が行われている。再発・難治性骨髄異形成症候群(血液がん)に対する抗がん剤「FF-10501」は18年に上市を目指し現在日米で第I相臨床試験を行っているほか、アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」が21年上市をメドに同じく日米で第Ⅱ相臨床試験を行っているが、売り上げ1兆円の期限となる18年までに大きな利益貢献は見込みにくい。

富士フイルムの9月末時点での現金及び現金同等物は6600億円に上る。手元資金の潤沢さを考えると、株主還元の強化は当然とも言えるが、見方によってはその豊富な資金を使い切れていないとも受け止められる。今後は古森CEOの言葉通り、利益を生む成長性高い企業に投資できるかどうかに注目が集まる

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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