弥生、オリックスと組み「金融サービス」へ 岡本社長に中長期的な戦略を聞く

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また、オリックスが展開しているレンタルオフィスやシェアオフィスといったサービスを、弥生を通じて提供していくことも可能です。このように、オリックスが大企業向けに展開しているサービスを、小規模事業者向けにカスタマイズして、新たなサービスとして提供するといったことも、事業コンシェルジュとしての取り組みのひとつになります。

顧客からみて、これが欲しいというものを弥生が前面に立って提供していくという仕組みが確立できるというわけです。その際、オリックスの製品、サービスをそのまま提供するのではなく、弥生が前面に立って、弥生の顧客向けにカスタマイズしたものを提供することこそが、価値を生むことになります。競合製品を開発、販売する企業は、業務ソフトウエアメーカーという枠から抜け切れていません。

しかし、われわれはそこに留まるつもりはなく、顧客の業務や事業そのものをお手伝いするサービス会社を目指しています。つまり、事業コンシェルジュの機能のなかに、業務ソフトウエアメーカーとしての役割が含まれるという考え方です。この実現に向けて、一気に加速ができることが、弥生にとっての大きなメリットです。

オリックス側のメリットは?

――本来、オリックスに聞くべき事ですが、オリックスにはどのようなメリットがもたらされると思いますか。

現在、日本の事業所数は、数年に渡って、廃業数が開業数を上回っているため、絶対数は減少傾向が続いています。ただ、減少傾向にあったとしても、必ず毎年一定量の開業する事業所がある。特に、新たな企業は最新のITサービスを活用していこうという意識が強い。弥生の強みはそうした企業にアプローチできることです。

ITを活用してこなかった旧来型の企業が廃業し、ITを活用する企業が増加するということは、全体的な事業所数が減少しても、弥生にとってはビジネスチャンスが増えているという見方もできます。また、中堅企業や大手企業を対象にしている業務ソフトウエアメーカーの場合、新たに会計ソフトを導入するということはありませんから、現在抱えている企業を維持することが中心になる。

これに対して、小規模事業者を対象にビジネスを行っている弥生は、新たに起業した企業を取り込むことができる。そこに弥生ならではの特徴がある。そして、こうした新たな企業が成長をしていくと、将来的には、オリックスグループの商品、サービスの対象になってくる。入口を弥生が担い、オリックスの商品およびサービスを、弥生を通じて間接的に利用し、企業の成長にあわせて、将来はオリックスと直接取引をするといったように、顧客のパイプラインを獲得できるというメリットがあるのではないでしょうか。

――弥生には、会計事務所を対象にした弥生PAP会員(プロフェッショナル・アドバイザー・プログラム)制度があります。会計事務所、税理士に対するメリットはありますか。

会計事務所、税理士も、顧問先のビジネスを支援するという点では、弥生と共通の認識を持っています。そこに弥生が幅広いサービスを提供することで、支援できる幅も広がるといえます。

もちろん、税理士は独自に金融機関とのパイプを持っていたり、様々な企業との連携も行っています。それをわれわれが代替しようとは思っていません。もうひとつの選択肢として、弥生を通じて、オリックスのサービスを提供していくということになります。

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