ウクライナ危機、鉄道が支える「避難と物資輸送」 欧州各国、避難民輸送に「運賃無料」や車両提供

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車両不足に対応するため、チェコ鉄道とオーストリア鉄道は客車を貸し出してサポートしており、プシェミシルからポーランド各都市へ向かう優等列車に連結して使用されている。また、通常はポーランド鉄道の客車を使用しているドイツ方面への国際列車は、車両不足のため代わりにドイツ鉄道の客車によって運行されているとの情報もある。近隣諸国と連携し、まさに物量作戦でこの難局を乗り切ろう、という算段のようだ。

ポーランドの列車に乗ったウクライナの子供たち。窓の下には「避難者は無料」という表示が(撮影:橋爪智之)

各国では援助物資を集め、それを列車に載せて運ぶという支援も行われている。チェコでは、主要駅で援助物資の寄付を募り、集められた物資は列車に積み込まれてポーランドやウクライナまで運ばれている。援助物資はとくに必要なものを中心にリスト化され、市民は駅へ持ち込むことで援助することができる。

貨物会社は援助物資輸送に

民間の列車運行事業者もサポートに乗り出している。チェコ国内の3社、レギオジェット、レオ・エクスプレス、アリーヴァの3社は、いずれも無料乗車を認めている。特にレギオジェットは、プラハ―プシェミシル間に直通の夜行列車を毎日運行している。ドイツもODEGなど一部の民間企業が無料乗車を認めている。

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援助物資の輸送についても、各国の貨物列車オペレーターが支援に乗り出している。ドイツ鉄道は、貨物部門のDBカーゴとそのポーランド子会社DBカーゴポーランド、ポーランド鉄道、ウクライナ鉄道と協力して、ドイツで集められた支援物資約350tを積んだ貨物列車を運行し、クラクフ経由でキーウへ向かった。

フランス国鉄貨物子会社のSNCF Fretも、他国の運行会社と協力のうえ、同じく支援物資約500パレットを積んだ貨物列車をウクライナへ向けて運行している。チェコ鉄道は前述の通り、各駅で寄付を募り、集められた支援物資を荷物車や客車へ積み込んで通常の営業列車に連結、またはそのまま臨時列車として運行し、直接ウクライナ方面へ運ばれた。

兵器や兵員の速やかな輸送など、戦術面において鉄道が重要な役割を果たすことは昔からよく知られていることだが、一方で線路で繋がったヨーロッパ各国は、鉄道によってさまざまな支援の輪が広まり、人道的かつ平和的な側面からウクライナを強力にバックアップしているのだ。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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