「大学入試を廃止」今こそ本気で考えるべき理由 橋爪大三郎氏に聞く「大学システム改革論」後編

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「大学入学共通テスト」のような画一的な選抜は、今の時代には適さない「愚かな方法」と言います(撮影:梅谷 秀司)
GAFAの強さの秘密を明かし、その危険性を警告した書籍『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は日本だけで15万部のベストセラーになり、日本に「GAFA」という言葉を定着させた。
その著者スコット・ギャロウェイ教授の最新作『GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略』も6万部のベストセラーになっている。本書では、コロナ禍でますます肥大化したGAFAや、この4社に匹敵する存在になるだろう「+X」の巨大テック企業が再び、世界をどのように創り変えていくかを予言している。
筆者のギャロウェイ氏はGAFA+Xの「最大の獲物」として「大学」を挙げている。日本の大学教育のあり方に危機感を持ち、警鐘を鳴らし続けてきた社会学者の橋爪大三郎・東京工業大学名誉教授に、これからの「大学のあるべき姿」を聞いた。その後編をお届けする。
前編:「格差をリセット」する教育本来の機能を取り戻せ

大学入試を廃止しよう

『GAFA next stage』の著者スコット・ギャロウェイさんは、MBAで教授をつとめる教育者でもあり、ここ数十年のアメリカの大学の現状を、これではまずいと思っている。特に、ITのこれからの発展を見据えているからこそ、あるべき大学の姿がよく見えている。我が意をえたり、と思いました。

『GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略』は、6万部のベストセラーになっている(書影をクリックするとアマゾンのページにジャンプします)

まず登場すべきなのは、オンラインを基本にする高等教育です。よりすぐりの教員を揃え、オンラインで展開すれば、これまでの中途半端な通信教育や、マンネリの従来型の大学より、ずっと質の高い教育ができる。必要なら、サテライト教室にチューターを配置して、つまずきそうなところをサポートしてもいい。

金のかかる大学のキャンパスは要りません。リアルタイムでズーム接続してもいいし、録画で繰り返し視聴できる。働きながら学ぶこともできる。学費は劇的に下がる。学生にとっても親にとっても、とてもうれしい。

大学改革を、大学に任せてはダメです。教育は、保守的な現場です。放っておいたら改革など起きません。今でも基本は明治時代のままです。

入学試験は必要か。教室の収容人数に上限があるから入試があったのですが、オンラインなら必要ない。大学入試がなければ、高校は本来の教育に専念でき、塾も予備校もいらなくなる。小中学校も変わります。高校入試も、とっくの昔に廃止しなければいけなかった。96%が高校に進学しているのに、なにを考えているのか。

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