中国の「出稼ぎの母親」たちの健康が深刻な危機に瀕している。彼女たちは健康診断の検査項目で何らかの異常値が検出される比率が、社会全体の平均水準より明らかに高い。しかも、体調不良の自覚があってもただ我慢する傾向が強いことが、最新の調査報告書から浮かび上がった。
ここで言う出稼ぎの母親とは、農村部の出身で農業以外の仕事に6カ月以上従事している出産経験のある女性のことだ。出稼ぎの母親たちの多くは(同じく出稼ぎをしている夫などの)家族と行動をともにし、出稼ぎ先の都市で工場の作業員、家政婦、清掃員、店員などの仕事に就いている。
中国国家統計局のデータによれば、中国には「農民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者が2020年時点で2億8560万人おり、そのうち3分の1強を女性が占めている。農民工の約8割が既婚者であることなどから推計すると、出稼ぎの母親の総数は少なくとも数千万人に上る。
冒頭の報告書をまとめたのは、民間の慈善団体である北京市協作者社会工作発展センターだ。2021年10月から2022年1月にかけて、広東省珠海市、山東省青島市、北京市の3都市で200名以上の出稼ぎの母親にアンケート調査を行い、そのうち10名には対面での聞き取り調査も実施した。
教育機会に恵まれず、健康意識が欠如
さらに、聞き取り調査の協力者に基本的な健康診断および婦人科の検診を受けてもらったところ、乳腺疾患、高脂血症、過度の肥満など多くの問題が見つかった。そして、それらの検出率は彼女たちが暮らす都市の平均値より顕著に高いことが判明したのだ。
検診を受けた出稼ぎの母親たちの平均年齢は42.5歳。まだ高齢とは言えない女性たちの健康状態が、なぜこれほど悪いのか。調査を通じて見えてきたのは、出稼ぎの母親たちは自身の健康管理に対する意識が総じて低く、病気や痛みを耐え忍ぶ傾向があることだ。
背景には、彼女たちが健康管理に関する基礎的な知識を身につけていない実態がある。出稼ぎの母親たちの大半は最終学歴が中卒以下で、今回の調査では回答者の3分の2が健康知識の学習機会がなかった。
それだけではない。教育の不足は彼女たちの職業選択を制約し、それが健康状態をさらに悪化させている面がある。
単純労働にしか就けない出稼ぎの母親たちは、休日も取らずに長時間労働を続けることで、より多くの収入を得ようとする。そのうえに(子育てや家族の食事の用意など)重い家事の負担を背負っており、彼女たちの健康状態に直接的な悪影響を及ぼしている。
(財新記者:彭楽怡、蒋模婷)
※原文の配信は3月8日
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