鉄道と競合?ヤマトとJAL「国内航空貨物便」の行方 フェリーも高速運航、貨物輸送は大競争時代に

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ヤマト運輸が運航する機体も旅客型からの改造で、中古機3機を導入予定である。運航は日本航空系列のLCC、ジェットスター・ジャパンが行う。日本航空はA321を運航していないが、ジェットスター・ジャパンは全機A320で運航しており、エアバス機は操縦性が統一されているので、A320のパイロットはA321も容易に操縦できるという、エアバスの強みが発揮されている。

航空業界全般の話になるが、近年はエアバスの勢力が強く、3年連続で新規の受注数はエアバスがボーイングを上回っている。ところが、世界の空を飛んでいる貨物専用機のほとんどはボーイング機材で、エアバスの貨物専用機は少ない。エアバス機材でもA300、A310といった現在は生産されていない機体は、すでに旅客機としてはほとんど使われておらず、貨物機に改造された例が多い。

しかし、エアバスは貨物専用機の新造機がほとんどなく、さらにA320ファミリーやワイドボディ機を代表するA330の貨物機への改造もほとんど行われてこなかった。ヤマト運輸が飛ばすA321P2Fも2020年に初号機が初飛行したばかりで、現在運航している航空会社もごくわずかである。

ところが、コロナ禍によって旅客便が激減、それまで旅客便の床下で運んでいた航空貨物が滞り、ここにきてエアバス機材の貨物専用機への転用が盛んになってきたのである。最新のA350の貨物専用機版も登場することになった。改造が多くなった背景には、ボーイング機含めてコロナ禍によって余剰になった旅客機が多数あり、改造の元になる機体が豊富にあるという理由もある。

そもそも、A320や同じA320ファミリーのA321などは、大手の近距離便やLCCで多く使われてきた機体で、胴体断面が小さいため床下にあまり貨物を搭載することはできなかった。LCCは空港での折り返し時間を短くして機体の稼働率を上げるビジネススタイルなので、積み下ろしに時間を要する貨物輸送には向いていなかった。

しかし、胴体断面の小さいA320でも、貨物専用機にするのであれば多くの貨物を収容できる。A321P2Fは、最大ペイロード28トン、メインデッキに14個のフルコンテナ、床下にA320ファミリー用の小型コンテナ10個が搭載できる。

国内貨物航空会社は初ではない

ところで、日本国内の貨物専門航空会社が運航するのは今回が初めてではない。過去に2例あった。

実は日本ユニバーサル航空運航時、ヤマト運輸も出資していた(筆者撮影)

1つは日本航空系列で、ヤマト運輸や日本通運が共同出資して設立された日本ユニバーサル航空。1991年から日本航空のボーイング747-200F型貨物専用機をリースして羽田―新千歳間や名古屋(中部国際空港は未開港)ー新千歳間を運航した。本州―北海道間の貨物輸送は日本国内の主要都市間では、唯一陸上輸送だけでは運べない区間であり、しかも双方向に大きな需要がある。JR貨物、太平洋や日本海を行くフェリーが重要な貨物輸送手段となっていたが、そこに航空貨物が参入した。

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