鉄道と競合?ヤマトとJAL「国内航空貨物便」の行方 フェリーも高速運航、貨物輸送は大競争時代に

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しかし、日本ユニバーサル航空は約1年で運航を終える。就航した時期が悪く、1991年はバブル経済破綻と重なり、高額な輸送費を費やしてまで航空便で急送する需要が減ったのである。

佐川急便の宅配トラックと同じデザインの貨物機も飛んでいた(筆者撮影)

もう1つは2006年就航のギャラクシーエアラインズで、こちらは佐川急便系列の貨物航空会社だった。機体に佐川急便の宅配トラックと同じデザインが施され、まさに空飛ぶ宅配便貨物会社が誕生した。機体はエアバスA300の貨物専用機で、1機は台湾のチャイナエアラインの旅客機からの改造ながら、もう1機は新造機が充てられ、羽田―新千歳、関西―新千歳、関西―北九州間を運航した。

ところが、こちらも就航時期が悪く、燃料高騰で採算性が低下、わずか2年の運航で姿を消す。この時期は、海外旅行でも「燃油サーチャージ」に悩まされた時期である。その後、燃料高騰は落ち着くので、ひょっとしたら、就航時に航空燃料価格が落ち着いていれば、国内航空貨物が定着していたのかもしれないが。

日本とアメリカの違い

この国内貨物航空会社2社が消えてしまった原因として、バブル経済の崩壊や燃料高騰があるが、そのほかに航空会社が空港側に支払う空港使用料は、機体の重さによって変わるので、一般的に貨物機の重量は重く、運航経費が高くつくという問題もあった。東京での発着空港が羽田だったため発着枠がタイトだったことも要因だ。

日本は国土が狭く、国内需要に対しては、鉄道や船で運んでも、航空貨物で運んでも所要時間に大きな差があるわけではない。

いっぽう、広大なアメリカでは宅配貨物航空会社が国土の中央に大きな拠点空港を持ち、旅客同様に、そこで積み換えを行うことで、全米のどこからどこへでも一晩で運べる態勢が整えられている。

最大手のフェデックス・エクスプレスでいえば、メンフィスを拠点に、深夜に全米からのフライトが集中し、未明に全米へ飛び立つ。その量は凄まじく、およそ22時から深夜1時までの間、2~3分間隔で貨物専用便が着陸する。筆者はメンフィス空港そばのホテルに泊まった経験があるが、深夜にあれだけの貨物機が着陸する空港はほかにない。貨物航空会社がメンフィスを拠点に選んだのには理由もあり、学生の多い街だったので、深夜のアルバイトによる荷物仕分けの労働力が確保できたからである。

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