増えている子どものオミクロン感染、その対策は? 子どもにワクチン接種ははたして必要なのか

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新型コロナウイルスは当初から小児は重症化しにくいことが知られていました。しかし、小児といっても0~15歳まで幅があり、どの年代の話をしているのかを明確にして議論をする必要があります。子どもが大人に成長していく過程で、体は確実に変わっていきます。ことに免疫に関しては大きな変化をしていきます。

免疫には生まれながらに備わっている自然免疫と、生きていくうちにウイルスや細菌に感染したことによりできる獲得免疫があります。ワクチンを受けて、いわゆる抗体ができたり細胞性免疫ができたりするのも、この獲得免疫の1つです。

子どもは抗ウイルス作用のある物質を作れる

小さな子どもは、自然免疫系が発達していて、たとえばインターフェロンといった抗ウイルス作用のある物質を作り出す能力が備わっています。ところが、成長とともにそれは減弱していき、代わりに人生経験としての獲得免疫が備わっていくのです。

逆に言えば、大人になるほど自然免疫は落ちていき、その代わりに獲得免疫で身を守っているのです。つまり、子どもの体は感染という学習によって、ゆるやかに獲得免疫を得ながら成長していかなければならず、これまでは家庭生活や学校、社会生活の中で自然に獲得していました。

ところが、最近は子どもを大人が囲い込みすぎてしまって、いろいろな感染症に対しての獲得免疫ができなくなっているのではと危惧します。将来的に、彼らが成長したときの免疫の在り方がとても気になります。

実は2021年はRSウイルス感染が大流行しました。それは、2020年の新型コロナの流行のあおりを受けて、幼児の集団保育がほとんどできなかったからだと考えられています。

これまでは幼稚園や保育園で感染して徐々に免疫を持っていくものでしたが、それができなかったのです。いつもなら感染してしまっていた子どもが翌年まで感染せず、集団保育が始まったとたん、2年分の子どもが感染したので大流行となったと考えて良いでしょう。

さて、2022年の年明けからオミクロン株が圧倒的なスピードで感染者を増やしました。従来型と比べて、子どもにも感染しやすいとの報道もされています。しかし、冷静でいてください。感染者が増えれば必然的に子どもの感染も増えます。

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お子さんが新型コロナにかかることがまるで生命の危機のように思っている保護者が大勢いらっしゃいますが、それは違います。

子どもにとっては新型コロナもただの風邪のようなものです。彼らは自然免疫で守られ、新型コロナの感染を学習している、保護者はそう思ってもらい、少しでも気を楽にしていただきたいものです。

ただし、基礎疾患を持っているお子さんの場合には、重症化リスクがあるので注意が必要です。

西村 秀一 国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルス疾患研究室長

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にしむらひでかず / Hidekazu Nishimura

1955年山形県生まれ。専門は呼吸器系ウイルス感染症、特にインフルエンザ。呼吸器系ウイルス感染症研究の日本における中心人物のひとり。

1984年山形大学医学部医学科卒業。医学博士。同大細菌学教室助手を経て、1994年4月から米National Research Councilのフェローとして、米国ジョージア州アトランタにあるCDC(疾病対策センター)のインフルエンザ部門で研究に従事。1996年12月に帰国後、国立感染症研究所ウイルス一部主任研究官を経て、2000年4月より現職。著書に井上亮編『新型コロナ「正しく恐れる」』がある。

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