「安心」や「買い物の楽しさ」を磨き、グーグルと差別化する--田中実・カカクコム社長
また、価格.comは単に店舗を募って商品価格を並べているだけではない。実際には、出店企業の信用調査を厳しく行い、その店舗で利用できる決済手段も信用度に応じて変えるなど、利用者が安心してショッピングをできるように、「人手」をかけている。
出店者の支払い状況などはつねにウォッチし、危ない兆候があったら掲載を取りやめる。その場合は当然、当社の収益にはマイナスだが。
今年も、ある有名な老舗ネットショップが破綻した。その会社からの支払いの遅延をきっかけに信用情報を精査、すぐに掲載を中止した。その会社は他のネット通販サイトにも出店していたが、そこでは倒産直前まで出店しており、そこを通じて購入していた人に大きな被害が出たと聞く。しかし、価格.comを通じて購入した消費者の被害は最小限に止められた。
また、掲載価格の正確さにも人手がかかっている。価格情報は店舗が入力しているが、小さな店舗などでは、自社サイトでの価格の登録と価格.comへの登録が連動しておらず、表示が食い違うことがある。これをシステム的にチェックして、違っていた場合には店舗に電話をして直してもらう。クローリング方式で行っているグーグルでは情報にタイムラグがあり、現時点では価格.comの情報のほうが正確だ。
こうした地道な積み重ねを通じて、どちらの情報が買い物の役に立つのか、利用者に選ばれるように努力するしかない。
対グーグルに限った話ではないが、「ネットショッピングでの価格の多様性」の維持にも力を入れている。価格比較サイトの存在意義は、価格が多様だからこそ。そのためには、量販店はもちろん、特にアキバ系の現金問屋などの中小ショップにも活躍してもらわなければいけない。
米国では、ネット家電販売市場が、アマゾン、イーベイ、ベストバイという巨大小売企業で寡占されてしまった。その結果、消費者は3サイトを見比べるしかなくなり、価格比較サービスの需要が小さくなってしまった。