駅から撤去が進む「正確な時計」まだ知らない真実 一般向けとは違う仕組みで時刻合わせしている
時刻を修正するやり方としては、長波電波修正方式、GNSS衛星電波修正方式、FM電波修正方式の3つがある。
長波電波修正方式は、情報通信研究機構が運用する国内2カ所の標準電波送信所から発信されている長波標準電波を受信することで標準時を得ている。GNSS衛星電波修正方式は、GNSS衛星から発信される正確な世界協定時の電波を受信するやり方だ。FM電波修正方式は、NHK-FMラジオ放送の時報音を検出して時刻を修正する方式で、FMアンテナでラジオの電波を受信している。
親時計がこの3つのいずれかを受信できれば、子時計に正確な時刻を伝えることができるのだ。
筆者が設備屋の鉄道マンだった頃、ある路線の親時計を見たことがある。メーカーのカタログにも出ているが、書類を収めるような大きなロッカーのような筐体に親時計が収められていた。扉を開くと文字盤が見えるのだが、肝心な時間を表示する文字盤は目覚まし時計くらいの大きさで、あとは子時計に電気信号を送るための装置に場所を費やしている。
電気時計・設備時計は明治時代・19世紀末頃に登場して広まったもので、100年ほどの歴史があるようだ。JRの前身となる国鉄の技術史をさかのぼると、親時計が電波を受信して全国的に正確な時刻を得る形になったのは1930年代とされる。
駅だけではない、鉄道の時計
電気時計は駅のホームだけではなく、鉄道に関連する施設にも設けられている。
駅の建屋もさることながら、駅の構内で作業が行われる場面に備えて照明の柱に時計が設置された事例も数多くあった。大きな駅の構内や車両基地、貨物駅、貨物列車を行き先別に仕分ける操車場など、鉄道マンが数多く従事していた場所では当たり前にあったものなのだ。
駅のホームにある時計は、直径や1辺の長さが60cm程度だが、貨物駅などでは直径が1.2mもある大きな時計が使用され、遠くからでも時刻が確認できるように作られていた。正確な時計が少なく、時計が貴重品だった頃の名残とも言えるだろうか。こうした時計も駅に先行する形で撤去が進んでいるのが現状で、首都圏であれば貨物列車の入れ換えが行われている八王子の駅構内などで見られる程度だ。
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