「福島原発事故の検証」がコロナ禍こそ重要な理由 事故10年検証が問う危機管理体制のあり方
「『いつものパターン』に陥ってはいけない」
これは、東日本大震災から10年の節目となる昨年、福島原発事故10年検証委員会(民間事故調)の最終報告書が述べたものである。重大な危機が起こった際に、調査を行い、報告書を発表して改革提言を行うものの、その後のフォローアップが行われず、次第に記憶が風化するにつれて危機意識も薄れて教訓を忘れ、改革も曖昧になってしまう。結果、同じ事態を繰り返すという日本社会の習性について表現している。
福島原発事故と新型コロナ危機など、天災であれ人災であれ、国家的な危機に対処した場合には、危機発生までの「備え(プリペアドネス)」と、発生後の「対応(レスポンス)」について検証し、成功と失敗から教訓を学ぶ。そして、その後の危機管理体制の強化を実行する。このような検証作業は「アフター・アクション・レビュー(AAR)」と呼ばれ、危機管理におけるセオリーだ。
日本人には失敗から学ぶ気概がある
なんだか難しいように聞こえるが、学生時代に誰もが経験した数学の問題を解く作業と同じである。数学の問題を解き、正解した問題と間違いた問題を見直し、次に同じような問題が出題された場合には、同じ間違いをしないようにする。危機管理という文脈で聞くと大仰なようだが、実際はシンプルである。
日本人は、失敗を繰り返さないように教訓を学び、後世に伝えるという気概を持っている。その証拠として、これまでも、さまざまな検証委員会が設置され、教訓を学ぼうという姿勢を示してきた。
例えば、2011年3月に起こった福島原発事故に対しては、①民間事故調、②東京電力事故調、③政府事故調に加え、「憲政史上初」と言われた④国会事故調と、4つの主要な検証委員会(事故調査委員会)が設置され、各々報告書を発表した。
ただし、報告書は出して終わりではない。
検証は、報告書と改革提言を発表したあとに、それらに基づいて実際に改革を行い、確実に能力向上を達成する必要がある。そのためには、マイルストーンを設定して、提言の達成状況をフォローアップすることは有用だ。
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