「福島原発事故の検証」がコロナ禍こそ重要な理由 事故10年検証が問う危機管理体制のあり方

印刷
A
A
福島第一原発事故から11年。そこから日本が学べることとは(写真:Toru Hanai/The New York Times)

「『いつものパターン』に陥ってはいけない」

これは、東日本大震災から10年の節目となる昨年、福島原発事故10年検証委員会(民間事故調)の最終報告書が述べたものである。重大な危機が起こった際に、調査を行い、報告書を発表して改革提言を行うものの、その後のフォローアップが行われず、次第に記憶が風化するにつれて危機意識も薄れて教訓を忘れ、改革も曖昧になってしまう。結果、同じ事態を繰り返すという日本社会の習性について表現している。

福島原発事故と新型コロナ危機など、天災であれ人災であれ、国家的な危機に対処した場合には、危機発生までの「備え(プリペアドネス)」と、発生後の「対応(レスポンス)」について検証し、成功と失敗から教訓を学ぶ。そして、その後の危機管理体制の強化を実行する。このような検証作業は「アフター・アクション・レビュー(AAR)」と呼ばれ、危機管理におけるセオリーだ。

日本人には失敗から学ぶ気概がある

なんだか難しいように聞こえるが、学生時代に誰もが経験した数学の問題を解く作業と同じである。数学の問題を解き、正解した問題と間違いた問題を見直し、次に同じような問題が出題された場合には、同じ間違いをしないようにする。危機管理という文脈で聞くと大仰なようだが、実際はシンプルである。

日本人は、失敗を繰り返さないように教訓を学び、後世に伝えるという気概を持っている。その証拠として、これまでも、さまざまな検証委員会が設置され、教訓を学ぼうという姿勢を示してきた。

例えば、2011年3月に起こった福島原発事故に対しては、①民間事故調、②東京電力事故調、③政府事故調に加え、「憲政史上初」と言われた④国会事故調と、4つの主要な検証委員会(事故調査委員会)が設置され、各々報告書を発表した。

ただし、報告書は出して終わりではない。

検証は、報告書と改革提言を発表したあとに、それらに基づいて実際に改革を行い、確実に能力向上を達成する必要がある。そのためには、マイルストーンを設定して、提言の達成状況をフォローアップすることは有用だ。

次ページ国の危機管理のあり方は進化したのか
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
「研究職600人雇い止め」理化学研究所に走る衝撃
「研究職600人雇い止め」理化学研究所に走る衝撃
日野自動車「データ改ざん」による重すぎる代償
日野自動車「データ改ざん」による重すぎる代償
マンションで急増「宅配ロッカー」が突く新課題
マンションで急増「宅配ロッカー」が突く新課題
ロシア発「合板ショック」、住宅価格へも波及する激震
ロシア発「合板ショック」、住宅価格へも波及する激震
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT