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政治・経済・投資 #ウクライナ侵攻、危機の本質

ウクライナ人脱出で欧州に再び「難民危機」の足音 受け入れ分担をめぐる意見衝突は避けられない

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  • 田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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EUの難民受け入れの枠組みを定めるダブリン規則では、庇護申請者が最初に入ったEU加盟国に難民の審査手続きを義務づけている。そのため、シリア難民の主たる玄関口であったギリシャ、北アフリカからの難民を乗せた船がたどり着くイタリアなどは、難民の審査や沿岸警備での物理的・経済的な負担が重かった。

2015年の難民危機発生を受け、難民の受け入れ負担が重い加盟国に対する資金支援を拡充し、不法移民の取り締まりや国境監視を行う欧州国境沿岸警備機関(FRONTEX)の財源・人員・権限を強化した。

今回、欧州に避難したウクライナ市民は90日のビザなし渡航の権利で入国している。一時保護規則を適用しなかった場合、ビザが切れる90日以降にEU圏内に留まるには、シリアや北アフリカからの庇護希望者同様に、難民申請が必要となっていた。数百万件もの難民申請が殺到し、多くのウクライナ市民を受け入れた東欧諸国で混乱が生じていた可能性がある。

ハンガリーやポーランドの協力には思惑も

ハンガリーは2015年の難民危機時に難民の受け入れ分担を拒否し、国境に難民の流入を抑制する鉄条網を設置していた。また、同様に受け入れを拒否したポーランドは、最近でもベラルーシ経由でのシリアやアフガニスタン難民の流入を抑制するため国境に壁を建設中だ。しかし、二国とも今回のウクライナ市民の避難受け入れには積極的に貢献している。

ポーランドは歴史的にロシアからの軍事的な脅威にさらされてきた。欧州がウクライナへの連帯を示さなければ、ロシアは足並みの乱れを突いてくる。近年、法の支配をめぐってEUとの対立を繰り返しているポーランドは、ウクライナ問題での積極貢献をてこにEUとの雪解けの機会を伺っている面もある。ハンガリーについては、4月にオルバン首相が再選を目指す議会選挙を控え、ロシアの脅威を集票につなげたいとの思惑が透けてみえる。

一時保護規則を適用したことで、東欧諸国での難民申請殺到による短期的な混乱は、回避可能とみられる。だが、ウクライナの緊張継続や同国でのロシアの影響力が拡大することにより、一時保護期間の終了後もウクライナ市民の帰国がままならない場合は、難民として受け入れる必要が出てくる。

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【難民申請となるとEU各国には重い財政負担に】

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