中国のDXを侮る人がわかってない「日本との大差」 日本が岩盤規制と既得権にとらわれているうちに

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日本では医師会などの反発もありなかなか普及が進みませんが、国内でも医療分野のデジタル化を本格的に推進し、高齢化で膨らむ医療費の削減を図ることは喫緊の課題でしょう。

中国では平安好医生(中国平安保険)のほかにも、ネット通販の2強と呼ばれるアリババ集団と京東集団(JD.com)がオンライン医療分野に力を入れ始めており、ECで培ったデジタル領域の知識と膨大な顧客網を武器に市場開拓を加速させています。

彼我の差は、かなり大きなものがあるのではないでしょうか。

ベゾスにも影響を与えた独自進化型スーパー

もうひとつの事例はリアル店舗でのDX事例です。

DXのなかでも、ネットと実店舗の垣根をなくすOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)の分野では、従来の顧客体験の刷新に成功しているある中国のスーパーマーケットが、世界的な注目を集めています。

アリババ集団が運営する盒馬鮮生(フーマーフレッシュ、以下フーマー)がそれで、同社が提唱する「新小売(ニューリテール)」の理念を体現する存在と言えるでしょう。

フーマーでは、30分以内の即時配送を特徴としたモデルを構築し、これまでの「ネットでは生鮮品が売れない」という常識を覆しました。フーマーが新規出店すると、その配送圏内の不動産価格が高騰するほど、中国人に支持されている次世代流通業です。

店内にある商品はすべてスマホで注文が可能。店内には水色のユニフォームを着た多くのスタッフが待機し、これらのスマホ注文に対応しています。

彼らは手にした端末に提示された商品をピッキングし、それを店内天井に設置されたベルトレーンに乗せます。それにより、注文商品は配達員が待機するバックヤードに迅速に運ばれていきます。

中国の次世代リテール「食馬生鮮(フーマーフレッシュ)」の店内(左:巨大ないけすが置かれた海鮮市場、右:店内で待機しECの注文に対応するスタッフ)(筆者撮影、2019年8月上海)

また、フーマーではビッグデータとAIを駆使し、ECでの売れ筋商品に加えて、配送エリア内に住む住民の属性や嗜好を踏まえた品ぞろえを構築しています。

店舗から半径3㎞を商圏とし(30分以内の配送が実現できる物理的距離)、商圏の人口動態や天気、曜日等のさまざまなデータをAIが分析。その日に仕入れる商品、数量、価格などを毎日調整しています。

さらには商品ごとの販売状況もリアルタイムで把握し、「ダイナミック・プライシング」によって価格を調整。在庫の適正化を図っています。

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