ロシアとウクライナの「姉妹都市」それぞれの葛藤 双方と縁が深いドイツ自治体のリアルと思惑

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戦争と難民はワンセットだ。ロシアが侵攻した日には、全国自治体連合組織「ドイツ都市会議」の代表マーカス・ルーヴェ氏が声明を発表。「ウクライナ近隣諸国、EU、ドイツは人道支援が必要。自治体は難民受け入れの準備はできている」と述べている。

エアランゲン市も侵攻開始の当日に集会を行っているが、フロリアン・ヤニック市長も避難者の受け入れ準備ができていると明言している。

また、3月3日の報道によると、冒頭の女性が住むニュルンベルク市ではすでに、4200人のウクライナからの退避者が到着。同市も早々に市内の受け入れを担当する組織が話し合いを行い、社会福祉事務所や赤十字の救急医療・医師らとも体制を整えた。

「難民慣れ」しているドイツ

ウクライナ語とロシア語を話す通訳補助者が支援のための情報を難民に提供しているほか、難民はさまざまな「チケット」を受け取れる。宿泊施設までのタクシーや、スーパーやフードバンクでの食料購入、さらに市内の動物園やプールなどの娯楽・健康・スポーツ施設使用のためのものである。宿泊費はまずは市が前払いする。とにかく、到着したばかりの人を助けることが優先だ。

同市も1993年から、ウクライナのハリコフ(ハルキウ州、人口約145万人)と姉妹都市関係を持つ。活発な交流があり、ハリコフに「ニュルンベルク・ハウス」をつくり、語学コースやセミナーなどが行われている。また市内にはロシアのコミュニティもある。

なお、ウクライナ難民は庇護手続きを必要とせず、仕事や社会扶助を受けることができ、最大3年間の滞在権利がある。

難民といえば、2015年に中東やアフリカからの難民が殺到した欧州難民危機が記憶に新しいが、ヨーロッパには何代かさかのぼると難民だと言う人がいる。第2次世界大戦後の難民流入で人口が増えた自治体も少なくない。もちろん、難民に対して否定的な人もいるが、筆者のような外国人の目から見ると「難民慣れ」さえあるように思う。

ロシアの侵攻によって、ドイツの各自治体はロシアの非難と、ウクライナへの連帯を示しているが、その見方が鮮明に表れているのが、バイエルン州内の自治体の市長が2月25日に共同で発表した声明だろう。

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