JR東「水素車両」、南武線で実験する納得の理由 「脱炭素」、JR東海は次世代バイオ燃料を試験

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ユーグレナは昨年12月までに41社のバスや船舶などで次世代バイオディーゼル燃料の試験を実施済みで、「基本的な性能は軽油と変わらない」という結果が得られたという。さらにバイオジェット燃料も開発し、同燃料を使って昨年6月には「ホンダジェット」が鹿児島から羽田空港まで飛行した。鉄道での試験が出遅れた理由は「以前から鉄道会社にコンタクトしていたが、1編成が長く大掛かりな実用テストになるため時間がかかった」とユーグレナの尾立維博エネルギーカンパニー長が説明する。

ビンに入った次世代バイオディーゼル燃料(手前)と新型のハイブリッド特急車両HC85系(記者撮影)

2月9日、次世代バイオディーゼル燃料を使った新型特急車両HC85系の走行試験の模様が名古屋市内にあるJR東海の車両基地で報道陣に公開された。バイオ燃料100%ではなく、ユーグレナと協議して今回は20%程度の混合率にした。JR東海の石原氏は「従来型のバイオ燃料は自動車ではエンジンにカスが残ったり部品に悪影響があったりしたと聞いている。次世代型ではこうした問題がないかをきちんと検証したい」と述べる。

研究の出発点はどちらも同じ

ただ、今回の実証実験が成功すれば即、営業運転に使われると考えるのは早計だ。石原氏は今後の課題として「供給量と価格の問題がクリアできない限り本格的な導入は難しい」と述べる。ユーグレナの尾立氏は「2025年までに事業規模を大型化して生産量を増やすとともに価格も大幅に下げる」と意気込む。だが石原氏は「当社は蓄電池電車や燃料電池車両も調査・研究しており、いちばんいい方法を選びたい」と慎重姿勢を取る。

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実はJR東日本の大泉所長も、「バイオディーゼル燃料も勉強しているが、供給量などの課題が多い。そこで自動車ですでに実用化されている水素を使って車両を造ることにした」と述べる。つまり、JR東日本とJR東海はアプローチこそ違うが、研究の出発点は同じだったわけだ。実際、現場では各社間でさまざまな意見交換も行われているようだ。おそらく、実証実験で得られた成果は各社で共有されるだろう。地球温暖化という迫り来る危機には鉄道業界が一丸となって対抗する必要がある。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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