JR東「水素車両」、南武線で実験する納得の理由 「脱炭素」、JR東海は次世代バイオ燃料を試験

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JR東日本は約440両の古いディーゼル車を最新の蓄電池電車やディーゼルハイブリッド車両に置き換える方針だ。そこに水素ハイブリッド電車がどこまで割って入っていけるかというと多くの課題がある。

水素と空気中の酸素を化学反応させて電力を発生させている様子。生成された水が水蒸気となって排出されている(記者撮影)

まず、車両の製造価格をどこまで引き下げられるか。ひばりは、「水素ステーションが線路の上を走っているようなもの」(大泉所長)で、かなり頑丈な作りにしたという。水素の貯蔵ユニットや配管ユニットに工夫を凝らし、異常時の水素放出システムについても万全の対策を講じている。当然ながら車両製造コストはかさむ。安全面はそのままにいかに簡略化できるか。

さらに、運行する場所でも水素が安定的に供給されるかという点も重要だ。水素の供給が困難だと走らせることはできない。

もし沿線自治体が水素を活用した街づくりにシフトすれば大きな追い風になる。その意味では、「世の中に広がるためには各地の自治体との取り組みがセットとなる」(大泉所長)。トヨタが進めている燃料電池自動車の普及施策にも期待したいところだ。

JR東海は車両ではなく「バイオ燃料」

一方、JR東海は別のアプローチをとった。車両を開発するのではなく、燃料を替えることにしたのだ。JR東海総合技術本部技術開発部の石原光昭チームマネージャーは次のように話す。「ディーゼル車両が発生させるCO2をどのように減らすか。自動車のように蓄電池や燃料電池を用いて電動化して走らせる方法もあるが、航続距離や安全性など解決すべき課題がある。そこで、既存のディーゼルエンジンのまま、次世代バイオディーゼル燃料を使うことでCO2排出実質ゼロを実現することを考えた」

JR東海は次世代バイオ燃料を試験する。既存のディーゼルエンジン搭載車両に給油する様子(記者撮影)

次世代バイオディーゼル燃料を開発したのはバイオベンチャーのユーグレナ。ミドリムシを活用した食品や化粧品を開発していることで知られる。バイオ燃料は植物や動物などの生物資源から製造する。以前はサトウキビやとうもろこしを原料としていたが、次世代型では食用と競合しない使用済みの食用油など廃棄物系原料を用いる。燃焼すると軽油などの化石燃料と同じようにCO2を排出するが、原料が成長過程で大気中のCO2を吸収しているので、燃焼時のCO2排出量が実質ゼロとなるというわけだ。

従来のバイオ燃料はエンジンでトラブルが生じる場合があり、軽油との混合比率は5%までに抑えられていたが、次世代型は軽油と同様に利用でき、軽油と混合せずバイオ燃料100%の状態でも使用可能とユーグレナは考えている。

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