JR東「水素車両」、南武線で実験する納得の理由 「脱炭素」、JR東海は次世代バイオ燃料を試験
JR東日本は2006年ごろにも燃料電池ハイブリッド車両を開発していた。しかし、この車両は「客を乗せない機械扱い」(大泉所長)だった。それに対して今回のひばりは「電車として届け出をした」。そのため、車内には普通の車両と同じ座席や吊り革が設置されている。
いつもなら新型車両の公開時はそのデザインに質問が集中する。ひばりのデザインも外観は青を基調に、内装はグリーンを基調にした特徴あるものだが、今回の報道陣の関心はまったく新しい水素ハイブリッド電車というコンセプトに向かった。
これまでもJR東日本は蓄電池電車のEV-E301系、ディーゼルハイブリッド形式で走行すると同時に排気ガス中の有害物質を低減するシステムも取り入れたHB-E210系などの環境配慮型車両を開発し、営業運転を行っている。ただ、ディーゼルハイブリッド車両はCO2排出がゼロになるわけではないし、蓄電池電車は1回の充電で走行できる距離が30km程度しかない。これに対してひばりは140km程度の走行が可能だ。
なぜ首都圏で実証試験?
ところで、蓄電池電車は烏山線や宇都宮線、ディーゼルハイブリッド車両は仙石東北ラインなど地方の路線を走る。それに対してひばりは鶴見線、南武線の一部区間などで実証試験を行う。首都圏を走るのはなぜか。
この理由について大泉所長は、「川崎市、横浜市などの臨海部は水素の製造や供給が容易であることを重視した」と説明する。川崎市、横浜市と神奈川県は京浜臨海部で風力発電により製造した水素を貯蔵、圧縮するシステムを整備し、そこで製造した水素を京浜臨海部で稼働する燃料電池フォークリフトに使用し、従来比80%以上のCO2削減を目指すという実証実験を行っている。JR東日本はこの仕組みをひばりの実証実験に活用できると考えた。つまり首都圏を走ることを前提としたのではなく、水素が安定的に供給される場所かどうかという観点で選ばれたわけだ。
川崎市とJR東日本は2015年に包括連携協定を締結している。JR東日本が自治体と包括的な協定を締結した初の事例だ。南武線支線の新駅設置の検討、南武線のイメージアップや、駅の活性化などを骨子としている。新駅設置は2016年開業の小田栄駅として実現したが、協定の取り組みの中には「水素の利活用に向けた検討」も含まれていた。南武線に水素ハイブリッド電車を走らせる構想はこの頃から始まっていたといえる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら