物言う株主すら退散する「M&A最強タッグ」の正体 東京機械も「秘策」で勝利した専門家集団たち
議決権行使助言会社への説得もIRJの隠れた強み。IRJが説得すると、防衛策導入に「原則反対」を表明しているアメリカのインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が「本件は例外」と認め、舞台はしだいに整っていった。
一方、パスファインドは東京機械の主張が正しいとみてもらえるよう世論の形成に動いた。依頼を受けたパスファインドは、アジア開発の株主に着目。株主関係図を作成し、東京機械の都並清史社長(当時)がインタビューを受けた際にメディアへ手渡した。
その結果、「アジア開発の背後にはどうやら怪しい“金主”がいて、輪転機という重要なインフラを支える実直な日本のメーカーが狙われているようだ」といった雰囲気の醸成に成功。効果はてきめんで、メディアの論調だけではなく、報道を通じて裁判所の判断にも少なからず影響を与えた。
これらの努力が実を結び、東京機械の臨時株主総会ではアジア開発を除いた少数株主の賛成多数を得る。裁判所はその結果を尊重した。負けてもおかしくない状況を、太田、IRJ、パスファインドという“鉄のトライアングル”がひっくり返した瞬間だった。
西松建設、東芝機械でも勝利
とはいえ3者は、すべての案件でトライアングルを組むわけではない。組もうとしたらすでに敵方についていた、ということもある。とくにPR会社は、パスファインドとボックスグローバル・ジャパンの2社による寡占状態で、ある意味、早い者勝ちで、先に話があったサイドにつく。
IRJについても同様だ。東京機械とアジア開発のバトルでも、実はアジア開発が先に声をかけていた。IRJは断ったようだが、もし引き受けていればトライアングルは成立せず、東京機械の総会決議もどうなっていたかわからない。
ただ、アクティビスト(物言う株主)と対峙する案件ではトライアングルは成立しやすい。なぜなら、IRJやパスファインドはアクティビスト側につかないと決めているからだ。事実、村上系ファンドが攻勢をかけた西松建設や旧・東芝機械(現・芝浦機械)の案件でもトライアングルは結成され、勝利を収めている。
MoMの応用や有事型の買収防衛策には、一定の批判があるのも確か。だが、依頼者のためにリスクをいとわず最善を尽くしてくれるという点では、企業にとって非常に心強いだろう。今後もさまざまな案件で、鉄のトライアングルは存在感を増していく。
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