黒田総裁は、「松岡修造効果」を狙っていた? 株価急騰後の、海外短期筋の売りに注意

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これは、まず消費税に関しては、先送りは景気にプラスとの考えによる。財政再建の遅れという点については、「景気が悪いのに無理して増税しなくても」「増税の単なる後ろ倒しであり、撤回でなければ、特に懸念するほどではない」との声が多いようだ。

また、総選挙については、現与党の勝利(議席数を多少減らしても過半数は確保)という前提で、さらに最長4年間安倍政権が続くかもしれない、これは政治体制の安定を意味するので株価にプラス、との意見が聞かれる。

急騰後は、いったん反落しそうな日本株

しかし今後の株価については、目先は警戒を持って臨みたい。足元の株価上昇の主因は、追加緩和や消費増税先送りを口実とした、外国人短期筋の日経平均先物買いだ。海外投資家でも長期筋は、急な株価の上振れに対し様子見姿勢を強めており、国内勢は総じて利食い売りに回っている。

このため、個別銘柄の物色は盛り上がらず、日経平均採用銘柄ばかりが先物との裁定取引で買い上げられているので、NT倍率(日経平均株価÷TOPIX)は11月13日に12.5倍と、今年に入っての最高値を記録し、現在の相場付きが歪んでいることを示している。

外国人短期筋が、株価の勢いが鈍ったとみて一転利食い売りに走れば、短期的には大きく株価が下振れするリスクがある。

ただし、米国を中心とした世界的な景気の持ち直しや、そのなかでの国内企業の増益基調といった、実態面の緩やかな改善は変わらない。日経平均株価は一旦17000円を割れた後、年末年始辺りに1万8000円水準を奪回すると予想する。

今週の日経平均株価の予想は下値1万6500円程度、上値は1万7700円程度としたい。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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