ハンドリングは、パワーステアリングこそしっかりした手応えがあるが、ハンドル操作に対するクルマの動きはとてもスムーズだ。低重心と、ボディの高いねじり剛性を実感する。
bZ4Xには、少ないハンドル操作でもタイヤが大きく切れる「ステア・バイ・ワイヤ」というステアリング機構がトヨタ車として初採用されるが、量産初期には導入せず、追ってオプション設定するという。
ブレーキングも安心感の高いものだった。低速コーナーの手前で時速100km程度から時速40kmへの急減速をトライしてみても、クルマの動きに一体感があり、挙動がつかみやすい。回生ブレーキも強く効き過ぎず、BEVに対する違和感はなかった。
加速感については、AWDのモーター駆動車らしい衝撃的なイメージではなく、ここでも安定感を優先した力強さを重んじていると感じた。ドライブモードはノーマルとECOがあるが、スポーティに走るモードは設定していない。
その後、前輪駆動車に乗り換えてみると、たしかに重量が軽くなった分、動きの軽快さは増すのだが、ガソリン車やディーゼル車、またはHEV(ハイブリッド車)のようにAWDとの大きな差を感じることはなかった。
1点だけ気になったのは、クルマがコーナーリング中、横Gによって左右に傾く“ロールの出方”だ。時速80km超でのコーナー後半で、ジワジワっと多めにロールを感じる。これは、トヨタの狙いとした乗り心地を重視することと相反する、サスペンションの基本的な性質だと理解した。
自然に乗り換えられるクルマに
試乗の前後で、開発責任者である井戸氏に直接、bZ4X開発について話を聞いた。その中で、「なぜ、前輪駆動ベースなのか」と質問してみた。
現在、BEV市場で最も数多く売れている「モデル3」を始めとするテスラは、RWD(後輪駆動)がベースだ。また、日本に12年ぶりに完全オンライン販売で再参入することで話題のヒョンデ「IONIQ5」や、日本のホンダ「Honda e」もRWDをベースしており、日産「リーフ」などFWD、あるいはFWDベースのAWDと大きく二分する状況になってきている。
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