「bZ4X」試乗でわかったトヨタBEV戦略の方向性 あえて「BEVらしさ」を強調せず「普通の車」へ

✎ 1〜 ✎ 84 ✎ 85 ✎ 86 ✎ 最新
拡大
縮小

ハンドリングは、パワーステアリングこそしっかりした手応えがあるが、ハンドル操作に対するクルマの動きはとてもスムーズだ。低重心と、ボディの高いねじり剛性を実感する。

bZ4Xには、少ないハンドル操作でもタイヤが大きく切れる「ステア・バイ・ワイヤ」というステアリング機構がトヨタ車として初採用されるが、量産初期には導入せず、追ってオプション設定するという。

ソーラーパネルが設置されるルーフもオプションで設定される(写真:トヨタ自動車)

ブレーキングも安心感の高いものだった。低速コーナーの手前で時速100km程度から時速40kmへの急減速をトライしてみても、クルマの動きに一体感があり、挙動がつかみやすい。回生ブレーキも強く効き過ぎず、BEVに対する違和感はなかった。

加速感については、AWDのモーター駆動車らしい衝撃的なイメージではなく、ここでも安定感を優先した力強さを重んじていると感じた。ドライブモードはノーマルとECOがあるが、スポーティに走るモードは設定していない。

車体前部にあるモーターなどの電動機器(筆者撮影)

その後、前輪駆動車に乗り換えてみると、たしかに重量が軽くなった分、動きの軽快さは増すのだが、ガソリン車やディーゼル車、またはHEV(ハイブリッド車)のようにAWDとの大きな差を感じることはなかった。

1点だけ気になったのは、クルマがコーナーリング中、横Gによって左右に傾く“ロールの出方”だ。時速80km超でのコーナー後半で、ジワジワっと多めにロールを感じる。これは、トヨタの狙いとした乗り心地を重視することと相反する、サスペンションの基本的な性質だと理解した。

自然に乗り換えられるクルマに    

試乗の前後で、開発責任者である井戸氏に直接、bZ4X開発について話を聞いた。その中で、「なぜ、前輪駆動ベースなのか」と質問してみた。

現在、BEV市場で最も数多く売れている「モデル3」を始めとするテスラは、RWD(後輪駆動)がベースだ。また、日本に12年ぶりに完全オンライン販売で再参入することで話題のヒョンデ「IONIQ5」や、日本のホンダ「Honda e」もRWDをベースしており、日産「リーフ」などFWD、あるいはFWDベースのAWDと大きく二分する状況になってきている。

次ページ答えは「居住性と多様化」にあり
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT