終身雇用を望む若者vs.身軽になりたい企業 「ひっそりと」終身雇用をやめたい会社の本音

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ここで、日本企業の終身雇用の歴史を振り返ってみましょう。終身雇用の歴史は意外と浅く、昭和に入ってからであり、本格的普及は戦後のこと。それまでは手に職を持つ職人の時代。職人は若い頃には高い技術を持つ親方につき、自身の技術を高めて最終的には独り立ちする。腕がよければ報酬も高いという、いわゆる能力給のシンプルな社会構造に属していたのです。

商人も同様。まず丁稚奉公から店に入り、商売のイロハを少しずつ学び、人脈を広げ、出世していく流れでした。終身雇用なんて存在していなかったのです。

ところが、産業革命で官営会社、国策会社などの大規模な企業が登場して状況は変わりました。大量生産のために大量の人材が必要になり、売り手市場が常態化。せっかく手間と時間をかけて育成した工員や鉱員が、賃金の高い職場を求め他社へ簡単に移ってしまうということが、当たり前の状況になりました。

これに頭を悩めた経営者は、社会保障と福利厚生に着目。当時は国による支援がなく、ひとたび事故や病気に見舞われれば、労働者は生活の糧を失い、路頭に迷う状況でした。経営者は自社の福利厚生などが他社より充実していることや、長く安心して勤められるということを強調し、技術労働者の安易な離職を防ごうとした……これが、終身雇用制の始まりです。

「万策尽きてのリストラ」から「日常的リストラ」へ

さて、そんな終身雇用を謳歌したのは団塊の世代前後まで。その後、景気低迷が続く中で、それが悪しき慣習であるかのような風潮が強まり、

《2000名の早期退職募集》

といった経営判断(リストラ)をする会社が増え続けました。新卒で終身雇用を前提に入社した社員たちで、早期退職の対象者として肩たたきされた人は「裏切られた」と思ったことでしょう。こうした報道が頻繁に登場したのは、バブル崩壊して数年が経過した1990年代前半あたりであったと記憶しています。

あれから早期退職、リストラという言葉にも誰もが慣れて、終身雇用の崩壊は着実に進んでいるようにも思えます。ただ、あくまでリストラを行い、終身雇用にメスを入れたのは業績がどうしようもなく厳しい企業ばかりでした。

「3年続けて赤字に転落して、もはやリストラしか手がない」

と万策尽きての手段だったのです。可能なかぎり雇用は守りたいとの前提で、「致し方なし」というタイミングまで終身雇用を壊したくないと考える経営陣が多かったからでしょう。

ところが、状況は変わりました。戦略的に終身雇用をやめ、同時に大胆なリストラに取り組む会社が出てきています。

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