日本の自動車メーカーの収益は回復途上《ムーディーズの業界分析》
11年3月期の第1四半期(4~6月期)決算は非常に好調な内容であった。第2四半期(7~9月期)決算は、新興市場の成長と、日本市場では政府補助金が寄与し、収益は継続的に緩やかな回復を示す、というムーディーズの予想とほぼ一致するとみられる。日本メーカーが優位に立つ東南アジア等の新興市場での業況は好調である。
しかし、欧州と北米のマクロ経済の回復力に関する不確実性が払拭されず、日本では政府補助金の終了や、円高による輸出へのマイナスの影響により、事業環境は11年3月期の下半期から12年3月期を通してより厳しくなるとみられる。
今後の課題と日本のメーカーの対応
日本では、政府補助金制度が今年9月に打ち切られたことで、販売台数が減少し、製品構成が悪化する可能性がある。同時に、日本のメーカーは消費者の高齢化と都市居住者の自動車保有率の低下という構造的な課題に今後も直面することになり、ますます海外に成長機会を求めざるをえない。
日本と同様、世界の自動車需要も小型車にシフトしていることから、1台当たりの利益は減少する。これに対応して、日産はタイ、インド、中国、メキシコで同一プラットホームの小型車を生産し、使用部品数を削減することなどでコストを低減する戦略を採用した。10年初めの全世界の稼働率は、業界全体の損益分岐点と思われる80%を下回っていた。しかし、柔軟性の高い生産システムを持つホンダは、地域需要や車種の需要の変化に合わせた生産車種・拠点の変更を他社より迅速に行うことで稼働率を最適化し、利益率の悪化を食い止めることができた。
日本の自動車メーカーは、10年3月期までに大規模なコスト削減を実施したため、11年3月期あるいは12年3月期の削減余地は限られている。日本の自動車メーカーの収益性は引き続き回復するとみられるものの、今後の課題も多いとみられる。