低所得の白人たちが反オバマになる理由--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

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多くのアメリカ人は今でも一生懸命に働いた人が豊かになると信じているため、億万長者に都合のいい事柄でも支持する傾向がある。それ以上に、こうした人々はそれとは違う何かに突き動かされているのだ。ポピュリズムは“恐れ”と“怒り”を原動力にしている。恐れとは地位や特権を失い、無力になることである。怒りは高学歴のリベラル派のエリートや仕事を奪う外国人、イスラム教徒やユダヤ人などの異教徒、黒人や不法移民に向けられている。

オバマ大統領の致命的な弱点

こうした恐れや怒りは至る所に見られ、かつてない高まりを見せているが、地域によって表現の仕方が異なる。カンザス州やコロラド州などの大平原諸州に住み、外界から遮断された生活をしている人は、教会やテントに大勢集まってコミュニティに対する思い入れを語り合い、いかがわしい宣教師の壮大な説教に耳を傾ける伝統を持っている。ペイリンとベッカーは、不安におののく人々を奮い立たせ、地上の天国を約束することで財を成してきた多くの宣教師や政治家の後継者なのである。

演説の中でベッカーは「アメリカは暗闇の中をさまよい、今日、神の元へ戻り始めた」と宣言した。こうした民衆扇動家たちの得意技は、愛国心と自由、神を融合することだ。ベッカーは、「アメリカは神が祝福した自由の国である」という神話を利用して、群衆が理解できるメッセージを送った。つまり、リベラルなエリートや民主党、神をないがしろにする社会主義者などの非アメリカ的なグループが、アメリカから誇りと価値を奪ったと訴えたのである。

集会後、ベッカーはインタビューに応じて、「オバマ大統領は間違った宗教的信念を持っている」と批判した。彼は、オバマ大統領は南米の社会主義革命の基礎となった“解放の神学”を信じていると指摘した。すなわちそれは、同大統領が社会主義者、非アメリカ的であることを意味する。


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