米国の大幅追加緩和の罠、「1兆ドル説」も飛び交う
日本銀行による10月5日の「包括緩和」は、上場投資信託(ETF)購入などリスクマネーの直接供給に踏み出すもので、“ルビコン川を渡った”第一歩と見なされている。長期国債の保有について、お札の発行残高以下に制限する日銀券ルールの適用外とする「基金」を新設したことで、量的緩和の自由度も増した。菅野雅明・JPモルガン証券経済調査部長は「外国人投資家の日本に対する関心は小泉人気以来の高まりを見せている」と話す。
ところが、日銀の最大の狙いだった円高阻止は実現できず、逆に1ドル=81円台へ円高が加速。1995年4月19日の最高値79円75銭が目前に迫った。理由は明白。市場は「金融緩和のフロントランナー」は日銀でなく、米連邦準備制度理事会(FRB)と確信しているためだ。
米国の雇用情勢は数字以上に悪い
FRBは11月2~3日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で、国債追加買い入れによる第2次量的緩和を決定する見込み。「総額1兆ドル」との観測も多いが、当初は約1000億~2000億ドルと小出しにし、必要に応じ積み増すとの見方が有力だ。それでも供給規模は日銀が今回決めた5兆円を大きく上回る。
量的緩和を決定づけたのは10月8日に発表された9月分の米雇用統計だった。非農業部門の雇用者数は前月比9・5万人の減少。民間雇用者は9カ月連続増加だが、増えたのは賃金の低いバーやレストランの従業員が中心。一方、州・地方の財政難で、新学期前に教員が5・8万人も削減された。失業率は9・6%で横ばいだったが、統計上は失業者にカウントされない、「職探しをしていない失業者」「正社員を希望してもなれないパート労働者」が増加傾向にある。数字以上に内実は悪い。